エリート救命医と身代わり花嫁の再会愛。
「……私こそ。話せばよかった。一人で抱えようとしなければよかった」
「お互い様だな」
彼は苦く笑って、私の頭をそっと撫でた。
「凛太郎くんに、感謝しないと」
やっとそれだけ言うと、航大くんが小さく笑った。
「あいつも、君のことを心配してたよ。『早く悠南を解放してほしい。幸せになってほしいんだ』ってずっと言ってた。……あいつらしいだろ」
その言葉に、また涙が滲んだ。ずっと私のことを気にかけていてくれた。知らないところで、こんなに多くの人が私を想ってくれていたんだと思ったら、胸がいっぱいになる。
「だから、もう怖がらなくていい。君はただ、ここにいてくれればいい」
彼は私の手を、ゆっくりと自分の胸に当てさせた。トクトクと、落ち着いたリズムが伝わってくる。
速くも遅くもない、静かで力強い鼓動。どんな夜も、ずっとここで刻まれていたのだ。私のために、と言ってくれたこの音が。
「この音、全部君のためだよ。君を守るために、君を幸せにするために俺はこれからも強く生きる。約束する」
私は彼の手の上に、自分の手を重ねた。言葉が出なかった。でも、それで十分な気がした。涙が出そうだったけれど、今度は悲しい涙じゃなかった。
しばらくそうして、二人でソファに座っていた。
陽の光が少しずつ角度を変えて、部屋の中をゆっくりと動いていく。何も言わなくてもよかった。
ただ、隣にいるだけで、十分だった。