まずは結婚してからだ
「だよねー。高校の頃から異次元の長距離ランナーで、駅伝じゃ毎年区間賞。今は大手航空会社のイケメンパイロット。住む世界が違いすぎて狙い所もわかんない。というより話しかけるのも恐れ多いもん。花梨もそう思うよね」

「う、うん。そうだね」

 花梨は口ごもりながら答え、うなずいた。
 さっきまで匠とふたりきりで話していたとは言えそうにない。
 ましてやこの後匠の車で送ってもらうなど、言える雰囲気でもない。

「花梨? どうかした?」

「え? 別に、どうもしないけど」

 首をかしげる彩芽に、花梨は口早に答えた。

「そう? なんだか顔が赤いよ」

「そ、それは。幸せそうな皐にあてられたのかも」

「わかる。視線で語る無言ののろけって言うの? ふたりの熱々ぶりに酔っちゃいそう。お開きまでもたないかも」

「ははっ。そうだよね」

 彩芽に相槌を打ちながら、花梨は視線を泳がせた。
 すると不意に振り向いた匠と視線がぶつかり、微笑まれたような気がして思わず息を止めた。
  意識してしまって笑顔を返すこともできない。
 クスリと笑われたような気がしたが、それすら花梨をドキリとさせるには十分。

『披露宴の後、家まで送るよ』

 単に面倒見がいいだけでそこに深い意味などないとわかっていても、照れくさくてそわそわしてしまう。

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