まずは結婚してからだ
「あ、大丈夫です」

 花梨はとっさに手を伸ばし紙袋を取り戻そうとするも、匠の動きの方が早かった。

「私、持ちます。全然重くないので大丈夫です」

 引き出物といっても中身は商品カタログと引き菓子や小ぶりの包み。
 いくら面倒見がいいとはいっても、匠に持ってもらうのは申し訳ない。

「いいよ、別に。それよりこのまま駐車場に下りるけど、いいか?」

「それは、あの」

 花梨は匠に取り上げられた紙袋をじとりと見つめた。

「この辺りで事故があったらしい。混み始めたようだからさっさとホテルから出た方がよさそうなんだ」

 匠は花梨を目で促すと、エレベーターに向かって歩き出した。

「事故ですか。わ、わかりました。でも……」

 匠に憧れている同僚たちが、彼が空港近くに住んでいると噂していた記憶がある。
  ここからだと花梨の家とは逆方向で、かなりの負担になるはずだ。
 やはり送ってもらうわけにはいかない。

「あの、青井先輩……青井副操縦士? どっち?」

 花梨はどう呼べばいいのかと悩み、首をかしげた。

「青井さんでいいけど?」

駐車場に下りるエレベーターに乗り込みながら、匠が軽く答えた。

「青井さん……」

 たしかに職場ではそう呼ばれているかもしれないが、体育会系だからか先輩への敬意がないようで、しっくりこない。
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