まずは結婚してからだ
 一瞬どうしようかと悩んだものの、今はまず電車で帰ると伝える方が先だ。
 エレベーターの扉の前に立ち、気持ちを落ち着けて口を開いた。

「お気遣いはありがたいんですけど、青井さんの帰りが遅くなるので私は電車で――」

「すみませーん」

 その時、四人の男女がエレベーターに駆け込んできた。

「え、え」

 エレベーターの前に立っていた花梨は、彼らにぶつかられそうになった瞬間思わず目を閉じてしまった。
 すると痛みを覚悟したと同時に腕を掴まれ、強い力で引っ張られた。
 そのまま勢いよく飛び込んだのは、匠の腕の中。軽く胸に押しつけられ、抱きしめられている。

「せ、先輩」

 花梨は目をまたたかせた。

「大丈夫か?」

「はい。大丈夫です」

 顔を上げると、匠の顔が目の前にある。
  口もとを歪め、心配そうに花梨の顔を覗き込んでいる。

「すみませんっ。大丈夫ですか?」

 駆け込んできた女性が慌てた様子で声をかけてきた。他の面々も「すみません」と口々につぶやいている。

「ケガはないですか? 彼の飛行機の時間があって、慌てちゃって。本当にごめんなさい」

 花梨とぶつかりそうになった女性が、申し訳なさそうに体を小さくする。
 それでも時間が気になるのか、スマートウォッチをチラチラと確認している。

「飛行機、ですか?」
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