まずは結婚してからだ
 エレベーターの階数表示を見ながら、花梨は尋ねた。地下の駐車場までもうすぐだ。

「え、えっと……いえ。これだけですけど」

 男性は訝かしげに答え、背中のリュックを見せた。

「それなら機内に持ち込めますね。あと、オンラインチェックインがご利用できますが、お済みですか?」

 花梨の立て続けの問いになにかを察したのか、男性が納得したようにうなずいた。

「今はまだ。でも、途中で済ませるつもりです」

「わかりました。完了後はお預けになる手荷物がなければカウンターに立ち寄らずにそのまま保安検査場に進めますので、そちらにお急ぎください」

 花梨はつい早口になりそうになるのをこらえながら、笑顔で答えた。
 ただでさえ焦っているはずの男性に、余計な不安を与えたくない。

「あと、差し出がましいとは思うのですが。羽田までの運転、焦らないようくれぐれもお気をつけくださいね」

 道中、混んでいないことを祈るばかりだが、焦って事故を起こしては元も子もない。

「ほら、言われてる」

 花梨にぶつかりそうになった女性が、ここぞとばかりに男性に声をかけた。

「焦って運転したら、絶対に事故るんだから。私たちが羽田まで送っていく。弟の結婚式の直後に事故ったなんて、シャレにもならないでしょ」

「う、うん。さんきゅ」

 女性の語気の強さに圧倒されて、男性が気まずげに答えた。
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