まずは結婚してからだ
 するとようやくエレベーターが地下駐車場に着き、扉が開いた。

「お先にどうぞ」

 花梨は素早くボタンを押して扉を開放すると、男性たちを促した。

「ありがとうございますっ。すみません」

 それぞれ頭を下げながら、駐車場に向かって駆けて行った。

「お気をつけて行ってらっしゃいませ」

 花梨は彼らの背中に声をかけ、思わず頭を下げた。
 これから搭乗されるお客様だと知って、体が自然と動いてしまう。

「間に合うといいですね」

 花梨は慌てて体を起こし、なにごともなかったかのように匠に声をかけた。
 グランドスタッフとしての習慣が出てしまい、恥ずかしい。

「そうだな。混んでないといいけど、ギリギリだろうな。それより、やっぱりタイムスケジュールが頭に入っているみたいだな。職業病?」

 匠が面白がるようにそう言って、花梨の顔を覗き込んだ。

「そういうわけではないんですけど、たまたまです」

 明日のフランクフルト便に続いて新千歳便だ。
  匠がそう言うのもわかるが、新千歳便は最近何度か担当していてすぐに頭に浮かんだけで、職業病というわけじゃない。

「それにお見送りの声がけと、頭を下げる角度もバッチリ。ここは羽田かと思った」

 匠は軽く肩を揺らし、笑っている。

「からかわないでください」

 花梨は頬を赤らめ、視線を泳がせた。

< 23 / 43 >

この作品をシェア

pagetop