まずは結婚してからだ
「弟は、父と父が再婚した女性との間に生まれた子どもで、私が十歳の時に初めて会ったんです。それだけの話で言いづらいわけでもないんです。ただ友達に同情されることも多かったので、自分からは言わないようにしていて」

「ああ、初めて会った時って、そういうことか」

 匠は納得したように何度かうなずいた。

「はい。でも、誤解しないでください。父は離婚する時に私を泣く泣く手放したそうだし、義理の母の茉奈加さんも私の味方になってくれる優しくて素敵な人で。私、家族のことが大好きだし、今幸せなんです。……あ、私の家庭環境を聞かされても困りますね」

聞いて楽しい話じゃない。匠も居心地が悪いはずだ。

「すみません、こんな話」

「弟さんと仲がいいのっていいな」

「え?」

 意外にも匠は口もとに笑みを浮かべ楽しそうに運転している。
花梨の話をさほど深刻に受け止めていないようだ。

「俺、子どもの頃そういうのに憧れた時期があったな。ひとりっ子だから、弟でも妹でも、どっちでもいいから欲しかったんだ。サンタにお願いしたこともあるし」

「サンタ」

 花梨は匠を見つめた。

 匠の口から〝サンタ〟という言葉が出てくるとは。
そのギャップに驚いた。

「弟さん、本当なら今日も沢野を迎えにくるはずだったんだろ? 大学生になっても姉を気にかけてるって、いい弟だな」

「あ、ありがとうございます」

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