まずは結婚してからだ
「恥ずかしがることないだろ? 後輩と一緒に泣いてる沢野、いい子だなって思ったし、綺麗だった」

「き、綺麗?」

思わず目を見開いた。

「冗談は言わないでください。先輩が優しいのは知ってますけど、困ります」

 そう、匠は優しい。
CAだけでなく仕事で関わるスタッフ誰に対しても、 平等に優しくてフラット。
花梨以外の女性にも、同じように優しく言葉をかけているはずだ。
それがわかっていても、恋愛はおろか男性との個人的な付き合いすらない花梨にとっては特別な言葉。
 どう反応するべきか、正解がわからない。

「冗談じゃない。もともと沢野のことは気になっていたし、あの時の沢野、見とれるくらい綺麗だった」

「み、見とれる?」

 いったいなにを言っているのかと頭の中で繰り返すものの、なにも浮かんでこない。

「声をかけるのももったいないって思うくらい」

「も、もったいないって、そんな、全然」

 さらに混乱して、花梨は助手席の背に力なく体を預けた。

 このシチュエーション、もしかして、夢だろうか?

「この辺りでいいのか? ナビだと結構近いけど」

「え……? あ、は、はい」

 混乱する花梨をよそに、匠は落ち着いた様子で運転を続けている。

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