まずは結婚してからだ
「近々更新するので、まだしばらくはここから羽田まで通います。羽田までの一時間、寝ている時も多くて……あ」

 花梨はハッとし、匠を見やる。

「今から羽田近くに戻るのに、のんびり話している場合じゃないですよね。引き留めてすみません。じゃあ、ありがとうございました」

 花梨は軽く頭を下げて助手席のドアを慎重に開き、脚を下ろした。
  新車に傷を付けてはいけないと、ヒヤヒヤする。
 匠も車から降りると、後部座席に置いていた花梨の荷物を取り出した。

「そんなに、急がなくてもいいのに」

 匠はそう言いながら、花梨に荷物を手渡した。

「いえ、わざわざ送ってもらって、ありがとうございました」

 自分は単なる後輩。
それも一緒に活動したことのない、世代が違う後輩。
そんな自分にまで気を配ってくれる面倒見のよさ。
  職場での評判がいいのも納得だ。
 副操縦士から機長になるのも時間の問題だと、同僚や顔見知りのCAから聞いたことがある。

「明日はフライトですし、今夜はゆっくり体を休めてください」

「沢野の方こそ、早番なら早く寝た方がいいな」

「そうですね。タクシーに乗った途端、また寝ちゃうことも多いんですけど」

 花梨はそう言って苦笑すると、軽く頭を下げた。

「とにかく、今日はありがとうございました。気をつけて帰ってくださいね」

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