まずは結婚してからだ
 搭乗ゲートで乗客を見送っている花梨を見かけたことがあるが、ランニングフォーム同様、研修でお手本として紹介できそうなほど、綺麗なお辞儀をしていた。
 誰よりも真剣に部活の練習に取り組んでいた花梨のことだ、今もその意識のまま、お辞儀ひとつ手を抜かず、真面目に何度も練習したのだろう。

「なんだよ、かわいいな」

 ポロリと口を突いて出た。
 真剣に仕事に取り組む彼女を「かわいい」などと安易に考えるのは申し訳ない気もするが、彼女のまっすぐながんばりがかわいいと思えて仕方がない。
 高校時代は全力で部活の練習に励み、職場でも、誠実な仕事ぶりがパイロットやCAたちの間で認められ、信頼されているという話を耳にしたこともある。
 そんな彼女のイメージは、真面目で仕事熱心。
 匠自身もそう思っていたが、実際の彼女はそこにかわいらしさが加わった、魅力的な女性だった。
 自宅まで送り届ける車内でもその印象は変わらず、仕事に対しても家族に対しても愛情深く真摯に向き合う彼女に興味が湧いた。
 まだ話し足りない気持ちに後押しされるようにドライブに誘ったが、きょとんとした彼女の顔。あんな気が抜けた顔は、陸上部でも職場でも、見たことがない。
 知り合ってから十年以上が経つというのに、今日初めて彼女と知り合った気分だ。
 花梨の声が聞きたくなったが、そういえば、と思い直した。

「明日、早番だったな」

 匠は苦笑すると。

【かわいい後輩になにか土産を買って帰るよ。おやすみ】

 電話に代えて、メッセージを送信した。

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