まずは結婚してからだ
「あ、青井先輩……いえ、青井副操縦士。あの、どうしてここに?」
花梨の高校の先輩で、現在は『日本エアウェイズ航空』――通称『NAW航空』の副操縦士である青井匠が立っている。
東京国際空港、いわゆる羽田空港で花梨がグランドスタッフとして働いている『日本エアウェイズサービス』は日本エアウェイズ航空の子会社で、勤務の際に匠を見かけることがある。
とはいっても言葉を交わす機会は滅多になく、入社前からの顔見知りなので軽く会釈し合うことはあっても、それだけの関係。
プライベートで顔を合わせるのは初めてかもしれない。
花梨は慌てて立ち上がった。
「お疲れ様です」
「お疲れ様」
匠は軽く肩をすくめ苦笑している。
「勤務中じゃないし、普通にしてくれよ」
「は、はい。すみません」
そう言われても、匠は大手日本エアウェイズ航空のパイロットだ。
高倍率で難関だと有名な採用試験を合格しただけでも十分優秀に違いないというのに、アメリカでの訓練もまれにみる素晴らしい成績で修了したという有名人。
加えて百八十センチ超の長身で、いつも飄々としていてフラット。
冷静な表情を崩さない端整な面差しはCAから注目され、人気を集めていると聞いている。
五歳年上の匠は花梨の高校の陸上部の先輩で、花梨の在学中には大会前に顔を出して監督とともに指導にあたってくれた。