まずは結婚してからだ
「そうだったんですか。全然気づきませんでした」

思いがけない偶然に、声が裏返る。

「俺も、さっき沢野を会場で見つけた時は驚いたよ」

「私も、びっくりしてます。まさか青井先輩とここで会うとは思わなくて」

「その呼び方、懐かしいな。と言っても俺と沢野は五年差だったっけ。一緒に練習したことはないんだけどな」

「でも、卒業後も練習を見に来てくださったから。つい先輩って呼んでしまうんです。すみません」

 同じ職場で働いている今、先輩というより副操縦士と呼ばれる方がしっくりくるのかもしれない。

「謝るなよ。ただ、懐かしいだけで別に構わない」

 匠は軽く肩をすくめた。

「顔が赤いけど、かなり飲んでるのか?」

 匠が顔を近づけ問いかける。

「乾杯で少し飲んだだけです。アルコールに弱くてそれだけでも顔が赤くなるんです」

 花梨は胸の前で手を横に振る。

「それに、明日は早番なんです。だから、どちらにしても飲めません」

「俺も、明日はフランクフルト。だから今日は飲めないんだ。二次会も申し訳ないけど欠席」

「私も欠席です」

 明日の朝が早いというのが一番の理由だが、皐のお祝いならすでに陸上部の仲間たちと済ませているのもあって、欠席させてもらうことにした。
 幹太との食事も早めに切り上げるつもりだったが、結局それもなくなってしまった。

< 9 / 43 >

この作品をシェア

pagetop