こもれび日和
歩と直の両親の事件だった。

あの日、通報を聞くなり
スギムラ刑事(当時)は
署の中で一番早く車に飛び乗った。

サイレンをならして到着したその場所で、
彼の目に飛び込んできたのは――

震えるように泣きじゃくる、
小さなふたつの背中だった。

歩。
そして直。

スギムラ刑事は
その場でゆっくり膝をつき、
そっと二人の視線の高さに合わせた。

「大丈夫だよ。
もうこわいことは、ないからね」

声を震えないように努めながら、
静かに、できるだけ優しく。

歩は声も出ないほど泣いていて、
直は兄の服をぎゅっとつかんで震えていた。

「ここは危ない。
安心できるところへ連れて行くね」

スギムラ刑事は二人を抱き上げ、
毛布で包み、
その小さな命を全身で守るように抱えて
パトカーへ乗せた。

その表情には、
刑事としてではなく、一人の大人としての
深い決意があった。

――ぜったい守る。
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