こもれび日和

2月14日、バレンタインの朝。
窓の外はまだ冬の冷たい風が吹いているのに、
春夏秋冬家の中は、なぜか春のようにほんわかしていた。

……というのも。

歩と直は朝からずっとそわそわしていたのだ。


着替えを終えると、蘭が台所から声をかけた。

「歩、直。はい、バレンタインのプレゼントだよ」

そっと渡されたのは、小さなハートの袋。

袋の中には
蘭特製・チョコレートクランチとチョコマフィン。

「わぁ……!ほんとにおかあさんがつくったの?」
歩の目がまんまる。

「わぁぁ……いいにおい……」
直は袋から漂う甘い香りにうっとりしてしまう。

蘭は笑いながら言った。

「いつもお手伝い頑張ってるからね。
ふたりへの“ありがとうチョコ”だよ」

歩は胸を張った。
直は少し照れながら袋を大事に抱えた。



「きょう、もしかして……」
歩がぽそっと言う。

「……ユイちゃんが……くれるかな……?」

「直も……マキちゃん、くれるかな……?」

ふたりとも顔が赤い。

蘭と律は後ろでくすりと笑いながら、
そっと見守っていた。


保育園に着くと、
園児たちがなんとなくそわそわしていて、
さらにチョコの甘い香りもどこかから漂っていた。

靴を脱ぎかけた歩の前に――

「歩くん……あのね……」
ユイが小さな袋を差し出した。

袋にはピンクのリボン。
中には小さなハート型のチョコクッキー。

「これ……ユイがつくったの。
歩くんに“どーぞ”……」

歩は一気に顔が赤くなった。

「あ、ありがとう……!!」

後ろではマキが、
もじもじしながら直に近づいてきた。

「直くん……これ……あげる……」

マキの袋には、
ねこ型のチョコレートボール。
直の好きな色のリボンが結んである。

直は袋を両手で大事に受け取った。

「……ありがとう……マキちゃん……」

その声はとても小さかったけれど、
マキにはしっかり届いていた。


教室へ向かう廊下で。

歩も直も袋を両腕で抱えながら
歩くたびに顔がにやけてしまう。

「歩、ユイちゃん、かわいかったね」
「直だって!マキちゃん優しかったよ!」

ふたりで照れ笑い。

するとトモが後ろから肩をたたいてきた。

「ぼくはねー、ママからもらった!
チョコケーキだった!」

「いいなぁ!」

「いいな〜!」

教室はいつもより甘くて、
いつもより楽しい空気でいっぱいだった。
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