こもれび日和
その瞬間、
背後から走る足音が近づき――


「蘭!!!」

「……っ!」

律は肩で息をしながら、
蘭を強く抱きしめた。


「どこに行くつもりなの……?
 ひとりで背負ってどうするの……?」


「……だって……わたし……赤ちゃんを……」

律は蘭の頬に両手を添えて言った。


「悔しいよ。悲しいよ。
 でも……蘭のせいじゃない。
 何があっても、俺の奥さんは蘭だけなんだ。
 一緒に帰ろう。
 泣きたいときは泣いていい。
 部屋にいてもいい。
 でも……ひとりにだけはならないでほしい」

蘭の目から、溢れるように涙が落ちた。


「……帰っても……いいの?」


「当たり前だよ。
 蘭さんの帰る場所は、ずっとここだよ」

蘭は肩を震わせて泣き、
律はその背をしっかりと抱きしめた。

静かなバス停に、2人の呼吸だけが響く。


夕暮れのコモレビ村。
律は蘭の手を握り、
ゆっくりと家へ向かって歩いた。
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