こもれび日和
次の日。
直は朝からそわそわしていた。

のりを敷いたご飯、ちくわの磯辺揚げ、卵焼きがひとつ。
彩りは少なめ。でも、それは直が「食べたい」と思えるお弁当だった。

夕方、帰ってきた直のリュックを開けると——
お弁当は、見事に空っぽだった。

「ぜんぶ、食べたよ!」

そう言って直は、少し照れながら笑った。

「うれしい!」

蘭は直を思わずぎゅっと抱きしめた。
律も「やったな!」と手をあげてハイタッチ。


夜、お風呂あがりのリビング。
直はぽつりと口を開いた。

「お弁当、かわいすぎて……食べたらもったいないって思ってた」

「そうだったんだ……ありがとうね、直」

「でもね、のり弁もおいしかった。こんどはまた、星のにんじんも、たべてみる」

そう言って、直はふわっと笑った。

蘭と律は、その笑顔を見て、静かに目を合わせた。

――子どもの「残す」には、ちゃんと理由がある。
言葉にするのはむずかしくても、心の奥では、たくさんの気持ちが揺れているのだ。

お弁当はからっぽになったけれど、蘭と律の胸は、やさしい気持ちでいっぱいだった。
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