こもれび日和
春夏秋冬家のリビングには、ほのかな焼き菓子の香りが漂っていた。
今日は、蘭が読み聞かせをしていた絵本に出てきた「りんごのマフィン」を、歩が「つくってみたい!」と言い出し、みんなで一緒におやつを作ったのだった。

マフィンが焼き上がり、縁側でほおばるひととき。

「んー、いいにおいー!」

「ふっくらしてるー!」

歩と直は、うれしそうに口をふくらませながら笑っていた。
律はコーヒーを片手に、蘭は子どもたちの様子をやさしく見守っていた。

そのときだった。

ふと、歩の動きが止まった。

小さく息をのんで、手の中のマフィンをじっと見つめている。

「……?」

直が首をかしげる。

「どうしたの、歩?」

と蘭がやわらかく声をかけると、歩は小さくつぶやいた。

「……このにおい、なんか、しってる……」

蘭が、そっと歩の顔をのぞき込む。

歩の目には、うっすらと涙がにじんでいた。

「……ママがね、おうちでマフィンつくってくれたの。おやつに、よく、つくってくれたの……」

ぽつり、ぽつりと言葉がこぼれる。
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