オノマトペの友情リアリティーショー

【05 新しい企画】


・【05 新しい企画】


 一旦みんなでいるのは休止になり、それぞれ多分他のみんなも教室で一人になって、待っていると、次は二つのグループに分かれて、料理をするという企画になった。
 それはまあ一応企画っぽいなと思いつつ、僕はヌメヌメとトロトロとキラキラと同じチームになりたいなぁ、と思った。
 ワクワクも悪くはないけども、多分四と四だと思うし、ワクワクは悪気が無くても、少し危なっかしいところがあるからだ。
 とは言え、こういうチーム分けで、なんとなくだけどもチームを組める側のメンバーにいれることは嬉しい。勿論僕以外の四人で組んじゃう可能性もあるけども。
 さて、と思っていると、どうやらくじ引きみたいで、上に穴の開いた四角い箱を渡されて、中のくじを引くという形だった。
 まさかくじ引きとは、と思いつつ、どれを引こうか箱に手を入れて、ごちゃ混ぜにしているわけだけども、何か引けるくじが一個しかないっぽい。
 僕はスタッフへ、
「くじ一個しかないですよ」
 と言うと、スタッフは真顔で呼吸すら停止させて、止まること数秒、スタッフが「あ」と言ってから、
「ペラペラくんが最後です」
 と言って、それならすぐに言えばいいのに、何か怪しいな、と思った。
 もしかすると運営スタッフでメンバーを決めている可能性があるので、同じメンバーになった子にくじがどうだったか聞こうと思った。
 調理室に移動すると、ドスドス以外のメンバーがそこにいて、僕はスタッフに促された立ち位置で分かったんだけども、どうやらチクチク、ガリガリと同じグループらしい。
 これではくじの話をし出したら、また何かいろいろ言われるよ、と思ってしまった。
 人数的にもと”震えあがっていたら”案の定、最後に来たドスドスが僕のチームに入った。つまり、僕のチームはドスドス、チクチク、ガリガリだ。
 どうやらカレーを作るようで、ジャガイモや人参、タマネギがゴロッと教壇のところのメインテーブルに置いてあり、具材は包丁で切って、豚肉はパックでそれもメインテーブルの上にあり、カレーはルーが既にあるみたいだ。ご飯は運営スタッフが炊飯器で炊くという話だった。
 向こうのチームは始まったと同時にキャッキャと楽しそうに会話しながら始まって、僕もあっちのチームが良かったと素直に思った。
 とりあえず僕がメインのテーブルから具材を持ってきたわけだけども、ドスドスは本当に何もする気が無いといった感じに黙って腕を組んでいる。
 チクチクも猫背でこっちを見てくるだけで、ガリガリもじっとこっちを眺めているだけだ。
 やっぱり僕が最初に声を出さないといけないみたいだ。でもなんというか、言葉で総攻撃というか、何か言ったらどうせ反対されるだけだから憂鬱だ。
 でも多分このチーム分けは仕組まれたチーム分けだろうから、僕がリーダーシップをとるということをスタッフから期待されている意味合いもあるだろうから、そのレールに乗るしかない。
 というかリーダーシップをとる気質だとスタッフから思われていることは決して悪いことじゃない。むしろかなり良い感じだ。
 僕は意を決して、
「じゃあドスドスとガリガリは野菜を洗ったり皮を剥いたりして、僕とチクチクで包丁を使ってカットしていこう」
 と言ってみると、案の定チクチクが、
「は? 何仕切ってんだよ、意味分かんねぇよ」
 と小声で言ってきて、ガリガリも鼻で僕のことを笑ってきた。
 でも、と負けじと、
「誰かがやらないと役割決まらないでしょ」
 と答えると、さっきまでずっと動かなかったドスドスが、
「それもそうだがな、それならおれが仕切る」
 と言い出したので即座に、
「それならそれでいいよ」
 とすぐにリーダーシップの位置を受け渡した。
 何故ならドスドスのリーダーぶりが上手くいくとは到底思えないので、ドスドスをかくれみのにして、裏回ししたほうが前面に出なくて良くて楽だと思ったからだ。スタッフも僕が裏回ししていることくらい気付くだろうし。
 ドスドスが咳払いしてから、
「じゃあできるヤツができることやれ」
 と言うとチクチクが小声で、
「は? さすがに偉そう過ぎだろ」
 と言い、ガリガリも大きく溜息をついた。
 またドスドスがすぐに手を出すかなと思っていると、何だか耐えているようで、じゃあと思って、
「僕包丁使えるからカットするけども、包丁使える?」
 と全員の目を見ながら言うと、チクチクが、
「は? 包丁くらい誰でも使えるだろ、意味分かんねぇ」
 と小声で言ったんだけども、ドスドスもガリガリもうんともすんとも言わないので、
「じゃあ包丁は僕とチクチクに譲ってもらうことにしよう」
 すると即座にチクチクが、
「譲るんじゃなくてアイツらが使えねぇだけじゃね?」
 ドスドスが語気を強めて、
「おれが洗ってやるよ、ガリガリは残りやれ」
 と言うと、ガリガリがバカにするように笑ってから「残りって何? 言葉足らず過ぎ」と言ったんだけども、即座に僕が、
「皮剥きしてくれると有難いかな」
 と声を出すと、ガリガリも「そう言えよ、そうさぁ、クズ」と言いながら、ピーラーを掴んだ。
 僕は無言でタマネギの皮を剥き、カットできる状態に二個したら、一個をチクチクに渡しながら、
「お願いします」
 と頭をさげると、チクチクは「別にいいけど」と言ってタマネギをカットし始めた。
 タマネギは洗う必要が無いので、蛇口をドスドスが独占していても勝手にできるのだ。
 結局リーダーシップをとっているのは僕だ。これは上手くいっている。このまま何も起きるなと思っていると、ドスドスとガリガリが小競り合いを始めた。
 ガリガリが、
「洗うの遅いんだよ、ジャガイモみたいに野暮ったいな、クズ」
 と食って掛かり出して、何で喧嘩弱いのにそんなこと言うんだという気持ちだ。
 でも下手に止めに入って、僕が吹き飛ばされてしまうと、その勢いで僕のリーダーシップが吹き飛ぶ可能性があるので、静観している。
 ドスドスも勿論負けじと、
「うるせぇよ、おれはホント丁寧なんだよ」
 確かにドスドスの野菜を洗うのは遅い。
 どうせ皮を剥くんだから、もうちょっと適当でも良い。
 そんな時だった。
「だからごちゃごちゃうるせぇんだよ!」
 とドスドスが声を荒らげたと思った瞬間にガリガリがぶっ飛んで、キラキラのチームまでガリガリが飛ばされて、ワクワクが受け止めた。
 それに対してチクチクが、
「は? またさっきと同じでは? 意味分かんねぇ、やめろよ、クソじゃん」
 と言ったところでドスドスが、
「クソってなんだよ! やっぱやり返す!」
 と怒号をあげたわけだけども、僕はなんとなく分かったことがある。
 ドスドスはガリガリが本当に弱いことを知っていて最初我慢していたということ、そしてチクチクはガリガリと比べて理性的だということ。
 だからある意味ガリガリは切り捨てた。あれはもう本当に意味が分からない。弱いのにあんな喧嘩腰なのは理解不能だ。
 でもこの2オノマトペなら、と思って、
「もうやめよう! 殴り合いとか蹴り合いとか! 本当にさっきと同じじゃん!」
 と、あえてデカい声で僕が間に入った。
 ドスドスもチクチクも構えのまま一切動かないので、そのまま僕が喋る。
「僕は喧嘩弱いから巻き込まれたら僕が最初に負けちゃう! それは知っている! でもこのまままた喧嘩しても勝敗関わらず雰囲気は一緒じゃん! どっちか勝とうが負けようが雰囲気は一緒なんだって! これじゃ進歩が無いからとりあえずカレーを作ろうよ!」
 するとキラキラが万雷の拍手をし始めて、それにつられて、向こうのチームは全員拍手をしてくれた。
「もうやめよう! 僕! 豚肉焼き始めるね! 一回焼いたほうが美味しいから!」
 と僕が本当に一番デカい声でそう言うと、ドスドスは舌打ちし、チクチクは「は? 声デカ過ぎなんですけど」と小声で言ったんだけども、喧嘩する流れは終わり、僕もそのまま豚肉を焼くことができた。
 のされたガリガリはスタッフが調理室の隅に移動させて、イスに座らされている。
 僕たちのチームも向こうのチームもまたカレー作りを再開させて、ついにカレーが完成し、作ったカレーはなんと交換して食べるということになった。
 キラキラのチームが作ったカレーをこっちが食べるなんて。せっかく豚肉をカリカリになるまで焼いて歯ごたえを作り出したカレーだったのに。このカレーをこっちの三人に食べてもらえば『やるな』とかなったのかもしれないのに。
 僕たちのテーブルには向こうのチームが作ったカレーが届けられたわけだけども、なんというか具材のサイズはバラバラで、ゴロッと丸々一個のジャガイモも入っていて、これは火が通っていないだろと思ってしまった。
 なんとなく、ドスドスもチクチクも不満そうな面持ちで、自分たちの作ったカレーを食べたそうにしていた。
 まあ一応いただきますとなり、食べ始めることになったんだけども、僕は自分の勘で、最初に食べ始めるのは違うと思って、まず意味無く伸びとかをしていると、最初にドスドスが豚肉をスプーンにすくって食べた瞬間だった。
「げぇぇええええええええええ! 生じゃねぇか! 何この食感! マジで気持ち悪ぃ! やっぱ自分たちのカレーが良かったわ!」
 と口に入れたカレーを全部口から出すと、向こうのキラキラが大笑いしながら、
「口からキラキラが出たんよ!」
 と囃し立てて、スマホをすぐに取り出して写真を撮り始めた。
 ドスドスがすぐ飛び掛かるかもと思ったけども、ぐったりと顔を青ざめさせて、正直それどころじゃないらしい。
 ルーとご飯を口に入れていたチクチクもドスドスを見たら、すぐに三角コーナーにぺっぺっと吐き出してから、
「は? 意味分かんねぇ!」
 と、ついに大きな声を出した。
 すると向こうのワクワクが、
「ねぇねぇ? どう不味かった感じぃー?」
 と質問するような感じで言ってきたと思ったら、ワクワクが今度はトロトロのほうを見ながら、
「豚肉入れる担当だったけども、トロトロはそういう意図ありで入れたわけぇー?」
 と生で提供したいと思って入れたはずないのに、そんなことを屈託の無い笑顔で聞き、思った通り、トロトロは半べそをかき始めて「ゴメンなさい、ゴメンなさい」と言い続け、それに対してワクワクがトロトロへさらに、
「でも面白撮れたよねー! これは狙った通りぃー?」
 と詰めるように言って、トロトロはもう泣きながら「そんな、はず、ないじゃない……生とは、思わなかった……もっと早く入れれば、良かった……あんま火通っちゃ、いけないって……キラキラも言っていたし……」
 キラキラは何故かカッコつけながら、
「豚肉は火入れが難しいんよ」
 と目元に流れ星を流した。
 これはさすがに酷いので、
「まず完成前にチェックしたらいいじゃないか」
 と一言言ってしまうと、ワクワクが、
「そういうのって言うには簡単だけども、本当にできると思うー?」
 するとチクチクが矢継ぎ早に、
「は? 小生は確認したけども? マズイの食べたくなくてな」
 と小声で言い、なんとか息も絶え絶えにドスドスが、
「そうだぜ、ホントこっちの豚肉はカリカリで旨かったのに」
 と言って何気に嬉しい。豚肉をカリカリに焼いたのは僕だから。
 向こうの様子をそれぞれ確認すると、ワクワクはちょっと分が悪そうだと思っているようで俯きがち、トロトロは相変わらずべそべそ泣いている。キラキラはカッコつけている顔をしているので良く分からない。ヌメヌメはキラキラの顔色を伺っているようだ。
 するとチクチクが、
「つーか八人分くらいあんだろ、小生らも自分たちのカレー食おうぜ」
 と小声で言いながら立ち上がり、向こうのカレーが入った皿はそのまま置いて、調理室の棚から別の皿を取り出したので、僕が、
「皿一旦洗おうか」
 と声を掛けると、チクチクが小声で、
「は? それくらい気付いていたし」
 と言って、二人で皿を洗ってから、チクチクは自分の分だけカレーを盛り、僕はドスドスの分もカレーを盛って置いた。ちなみにガリガリはまだ教室の隅でぐったりしている。
 するとキラキラが、
「でもさ! スタッフー! 面白撮れたんよ!」
 と言ってキシシと笑い、一緒になってヌメヌメも笑って、反省ゼロだった。
 その後、僕たちは自分たちのカレーを食べて、僕が「美味しいね」と言うと、チクチクは、
「は? 当然だろ」
 と言い、ドスドスは、
「マジで普通」
 と言いつつも、おかわりもしていた。
< 5 / 9 >

この作品をシェア

pagetop