オノマトペの友情リアリティーショー

【04 これからの思考と】


・【04 これからの思考と】


 さてさて、きっと最終的には何でも多数決にはなるだろうから、早めに味方につけておきたいメンバーを考えることにしよう。
 あの感じだと、トロトロはすぐにでも友達になれそうで、ヌメヌメも悪くなく、ワクワク、キラキラあたりも上手くおだてればなんとかなるっぽいとは思った。
 スタッフの準備も終わり、また体育館に全員呼び出された。
 どうやらここからフリーでトークする企画みたいで、軽く何かの説明はあったけども、イスすら無くて、そんなん企画でも何でもないだろ、と思っていると即座にワクワクが声を出した。
「ねぇねぇ! 一度も自分の教室から外に出ないで喋っていた人いるぅー?」
 それはまあ僕なんだけども、どういう意図なのか分からず、つい『僕です』と言うことをためらって、少し待ってしまうと、ガリガリが、
「なぁ! 我とかは結構立ったり座ったりで足腰が痛ぇけども、ずっと座っていたヤツとかいんのか! いたらクズ!」
 と荒らげて、一気に『僕です』と言いづらくなってしまった。
 どうしようと思っていると、ドスドスが、
「おれは一回だけ立ったな。ペラペラなんかのために歩いたけどもマジであれなんだったんだ」
 するとワクワクが、
「そうだね! 俺もペラペラの時はペラペラの教室に行ったよ!」
 と言うと、チクチクが小声で、
「コイツだけ楽したのかよ、は?」
 これは黙っていたら意味無く言葉でタコ殴りされると思って、
「確かに僕は立たなかったけども、それは運営が決めたことだから僕がそうしたいと言ったわけじゃないよっ」
 と、ちょっと愛嬌のある声で言ったんだけども、チクチクは嫌そうな声で、
「は? というか小生が動きますとか言えば?」
 と言ってきて、何だか本当に嫌だ。何でワクワクがこんなことを言い出したのか知りたくて、
「何でワクワクはそれが気になったの?」
 と聞いてみると、ワクワクはあっけらかんと、
「えー、ちょっと聞いただけなのにー、そんな質問しないでよー」
 と笑うだけで、本当に意味は無かったらしい。
 でもこういう展開になりそうとか考えないのかな?
 いやいや、でも今まさに僕とワクワクが一緒に会話している状態こそが大切だと思い、流れで、
「そうだ! 何かその箱にあるヤツは好きに使っていいみたいだから、一緒にトランプでもしないっ?」
 と箱を指差しながらワクワクを誘うことにした。
 “軽く何かの説明があって”の何かの部分。
 箱。
 フリートークの前に、箱の中のモノは好きに使っていいとスタッフから言われていた。
 一瞬『モノボケ?』と思ったけども、普通にトランプや知らないボードゲームがあったので、それを使うことがいいんじゃないかなと思ったのだ。
 僕の予想では、ワクワクは乗ってくると思う。
 とにかく自分の楽しいを追求するほうだから、何もしないよりもきっと遊んだほうが楽しいと思うはず。
 するとワクワクは、
「いいねー! やろう! 俺神経衰弱得意なんだよねー!」
 ここがチャンスだと思い、一気に、
「キラキラもヌメヌメもトロトロも一緒にトランプしないっ?」
 と僕が与しやすいと思っているメンバーを一気に誘うことにした。
 ちなみにちょっとした配慮だけども、まとめて言う時はキラキラを最初に言うことにした。何故ならキラキラは基本自分が一番目立たないと好きじゃないほうだと思うから。流れ上、ワクワクを最初に誘うことになったけども、それ以外では一番だよという思いを込めて。
 するとキラキラもヌメヌメもトロトロも口々に、
「いいぜ! 吾輩のトランプはすごいんだぜ!」
「じゃ、じゃあぼくも……」
「トロトロも、やるよ」
 というわけで、僕はトロトロの近くに集まって、トロトロにはそのまま床にストンと座ってもらって、5オノマトペでトランプをシャッフルしてから並べて、神経衰弱をすることにした。
 ワクワクが自ら言ってくれた神経衰弱だけども、これは本当に良いゲームを提案してくれたと思っている。
 何故ならこういうゲームをする時、トロトロの遅さが一番ネックになるところだけども、神経衰弱なら他の人が待っている時でも考えることができるので、トロトロの番だけやたら遅いという状況を消すことができると思うからだ。
 勿論動作の遅さはあるけども、それくらいはネックにならないはず……と思っていたんだけども、トロトロのトロトロさは規格外で、神経衰弱をし始めてから、主にワクワクとキラキラが遅いなぁみたいな面持ちをし始めている。
 何でこんな遅いんだろうと僕も思った時に、もしや他の人がやっている時はあまり考えていないのでは? と思い、僕はこのトロトロの性格が普通というか良い子だと断定して、
「トロトロ、みんなの番の時も考えていると、思考の処理がより早くなるかも」
 とアドバイスしてみると、トロトロじゃなくてワクワクが声をあげた。
「すごー! そんなこと考えなかったー! でもそうか! 神経衰弱って常時思考していたほうがいいもんなぁ!」
 ちょうどワクワクが喋る分の思考時間が必要だったみたいで、そこから間髪入れずにトロトロが、
「そっかぁ、そっちのほうが、効率、良いねぇ」
 と言ってくれて、クソバイスにならなくてホッとした。
 さて、だからってトロトロがすぐに早くなるとも思わないので、こっからが僕の本当の実力発揮。
 ペラペラとしょうもないあるあるネタを言って場を繋ごうじゃないか。
 結局この世代のお笑いと言えば、あるあるネタがメインなので、どのあるあるがウケるか判断しつつ、なんとなく共通項を探っていこう。
「硬派なトランプってさ、画風が独特でちょっと怖いよね、ピエロとかキングの目が特に怖いんだよね」
 と、まず目の前のトランプのあるあるを一つ放り込んだ。
 ややウケといった感じだろうか、くすぐりとしては悪くない、と思ったところで、急にキラキラが、
「それだとさ! クイーンの目も怖いよな!」
 と言ってきて、いやいや僕のあるあるへのフリーライドじゃないか、と思ったんだけども、まあ会話になるという形は非常に良い。
 その流れに乗って、
「誰が近くを通っても吠える犬って目つきが異常だよね」
 と目から別のあるあるに飛ばしてみると、ワクワクが、
「分かるー! あの犬、誰に懐いているんだーっつってー!」
 と声を出してくれて、神経衰弱しつつトークがちゃんと盛り上がってきている感じがする。
 もうちょいあるあるを押してみるか、と思って、
「犬と言えばトイプードルって野生の時代は本当にどうしていたんだってくらい可愛いよね」
 と言ってみると、何だかちょっとウケがイマイチだったっぽい。
 どうやらトイプードルがピンときていない様子だ。ということは犬の話題は共通項にはなりづらいというところか。
 神経衰弱はとにかくキラキラが強くて、どんどんカードを取っていくため、次のヌメヌメが全て運頼りになってしまう。
 するとそのヌメヌメのあとにカードをめくるワクワクが急に、
「わ! 今のカード濡れてたー! ヌメヌメってカード濡らすほうぅー?」
 と何の失礼とか考えていないような感じでそう言って、これはすぐに別の会話で流さなきゃと思って、
「カードと言えば、IC系カードとかって無駄に人間の名前っぽくしていて、その名前の人間が可哀想だよね!」
 と、あるあるで返してみたんだけども、ワクワクは全然気にせず、
「いやいや! ヌメヌメに話聞いているんだけどもー!」
 と言って、もはやちょっと詰める感じで。
 ヌメヌメは恥ずかしそうに俯いてしまい、ちょっと微妙な空気が流れかけたその時だった。
 キラキラがサムアップしながら、
「緊張しているんだよな! 吾輩も緊張してるんよ! ほらオノマトペによっては手から汗が出るし、俺は手から金粉出してるんよ! なんてね!」
 と言って、ワクワクにウィンクした。
 なんてキラキラしている受け答えというか、かばいかたというか、そうか、そうやって真正面からかばったっていいんだ。
 むしろ話を早く流そうとした僕はちょっと間違っていたのかもしれない。
 ヌメヌメはキラキラのほうを見て、ヌメヌメに見られていることに気付いたキラキラがニッコリ微笑むと、ヌメヌメが、
「そ、そうなんだ、ぼくは手汗が酷くて……」
 するとワクワクはハッと目を見開いたと思ったら、
「そ! そっかー! なんか気が利かなくてゴメンねー! そういうオノマトペもいるもんねー!」
 気が利かないは言葉が違うような気がするけども、ワクワクも変なことを言ったって気付いたみたいで良かった。
 さて、リーダーシップをとるにはキラキラが一番のライバルかもしれない。僕も負けないようにしなきゃ。常に脳内で思考だ。
 とは言え、盛り上がってきたことは非常に良い……と思ったところで、ガリガリが近付いてきて、もうトランプを踏むくらいのところに来て、
「つーか、トランプなんて原始的でクズ遊びだな」
 するとすぐにキラキラが立ち上がり、
「クズ遊びって何? 楽しくやっているんだからさ。というかもしかするとあれかい! 一緒にやりたいんかい! じゃあ二回戦からやろうん!」
 と握手しようと手を出すと、その手をパンと叩いて、残りの伏せているトランプを蹴ったガリガリ。
 あまりにも酷い。でもチャンスでもある。こういう時にガリガリをしっかり撃退すると僕の株もあがるというもんだ。
 僕は一気にペラペラ力を高めて、ペラペラと論理的に責め立てることにした。
「何でそんなことするの? していいはずないじゃん。オノマトペが何かやっているところを邪魔するって絶対ダメじゃないか。ただ暴力で邪魔するという行為が許される世界なんて存在しないよ。そんなんでこれからもやっていけると思っているの? 暴力は暴力で淘汰されるから、本当に一番強くないと生きていけないよ?」
 するとワクワクが目を輝かせながら、
「すごい言葉の応酬! ペラペラって何でそんな一気に立て板に水で喋れるのー! すげぇー!」
 そんな解決する前から尊敬してくれるのはちょっと違うけども、果たしてガリガリは次に何を出してくるだろうか。
 でも僕は一対一トークの時にガリガリがめっちゃ弱いということは知っている。仮に手を出されてもやり返すことができる。
 逆に何でガリガリはこんな弱いのにこんなやり方をしてくるのか謎過ぎる。明らかに非合理的だ。
 その時だった。
「いっぱい喋ってうるせぇな、やっぱ正義感カスは嫌いだぜ」
 そう言ってドスドスがなんと僕に近付いてきたのだ!
 いやドスドスはガタイも大きいし、大人くらいの身長だし、喧嘩して勝てそうなビジョンは浮かばない。これはヤバイかもと思っているとワクワクが、
「ペラペラ大丈夫っ? でもファイト―!」
 と何か殴り合いを促すようにバンザイして、なんて最悪な合いの手なんだと思ってしまった。
 でもそれも全然嫌味な感じじゃなくて、本当に屈託なく言っている。
 ここはドスドスの矛先をガリガリに向けなきゃと思い、
「僕はガリガリが絡んできたから喋っただけで……」
 と先細りの声になるように演技して、できるだけ短くそう言うと、ガリガリは一気に気持ちを盛り返したように、
「なぁんだ! クズ! ビビってんじゃねぇよ! クズ! やっぱり我が怖いんだな! おい! クズ! そのまま黙れクズ! ザコは引っ込んでろクズ!」
 僕は言われれば言われるほどこうべを垂れて、負けている感じを出す。
 すると案の定ガリガリは調子に乗ってよく喋る。
「クズ! クズ! クズ! この場の全員クズ! 我が一番だわ! あーぁ! クズばっかでお里が知れるわ!」
 段々ドスドスの目線がガリガリに向いてきて、ある一定の時に達した瞬間、ドスドスが、
「おれもカスってか! おい!」
 と言ってガリガリを両手で突き飛ばすと、ガリガリはもう体育館の壁に叩きつけられるほどにぶっ飛んで、その場に尻もちをついてぐったりした。
 ドスドスはこれでもう心が晴れたみたいで、僕たちには目をくれず、ふんぞり返っていると、様子を伺いに既に近くに来ていたチクチクが小声で、
「は? メンタル弱っ、あの程度のことでキレるの意味分かんねぇ」
 と言うと、即座にドスドスは反応して、チクチクに殴りかかったんだけども、チクチクは寸止めされたかのように、ギリギリでかわしたと思ったら、細かく蹴りをドスドスに喰らわせ始めて、チクチクはドスドスの攻撃を全部かわして、チクチクが一方的に攻撃を当てる展開に。
 チクチクってこんなに強いんだと思っていると、最後にチクチクの空中回転蹴りがドスドスのアゴにクリーンヒットして、ドスドスはその場に大の字になって倒れ込んだ。
 それを見ていたキラキラが急にスマホを取り出したと思ったら、
「何か自業自得だし、写真撮っちゃうんよ!」
 と言ったので、僕は慌てて、
「そういうのはさすがに良くないよ! それぞれ自己という思惑もあるんだから!」
 と止めに入ると、キラキラも「そっかー」と言って、まあ止まってくれて良かった。
 そのタイミングでスタッフは割って入ってきたんだけども、ちょっと遅いんじゃ、とは思ってしまった。
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