この度、元副総長さまが会社の先輩になりまして。
01 春と再会
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最後に会ったそのひとは、なにかに侵されたみたいにぼろぼろになっていて、無性に哀しくなった。あんなに綺麗な顔立ちだったのに、頬は痩せこけて、そこに清潔さはなくて、艶々だった髪の毛だって、触れずとも目に見えて乾ききっていた。
「ごめんね、忙しくてなかなか会える時間作れなくて」
「千景のやつ、最近連絡取れなくてさ」
「七海、七海は俺と一緒にいてくれるよね?」
「ずっと俺の味方でいてくれるよね」
私はこわくなって逃げ出したのだ。なんて声をかけてあげればいいのかわからなかった。ずっとそばにいてあげられるって自信がなかった。ごめんなさいって、ただそれだけを言って、寂しそうに肩を落としたそのひとを残して、泣きながら逃げ出したのだ。
あのとき私が首を縦に振っていたらなにかが変わっていた、なんてことは思わないし、関わってはいけないひとだったのは間違いないのだけれど、きっとこの先もずっと、私はその日のことを忘れるなんてことはできないのだろうなって、思うだけだ。
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「――、夢か」
寝ぼけまなこで枕元をがさごそして、スマホのスクリーンを照らす。06:38、起きるには早すぎるけれど、二度寝するには目が冴えすぎてしまった。
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