この度、元副総長さまが会社の先輩になりまして。
同じ夢を、何度も見る。もう十年近く前の記憶なのに、まるでそれが私のすべてだったかのように繰り返されるから、いい加減呆れてしまう。
二週間後には社会人だ。そして今晩は、新規採用者と若手社員の入社前懇親会がある。
[七海、明日の懇親会、駅で待ち合わせて一緒に行こうよ( ᴖ ̫ᴖ )]
昨日の夜に届いていたメッセージに今さら気づいた。
春から同期になる卜部いろは。面接や説明会で何度か顔を合わせているうちに意気投合して仲良くなった。
私はいろはほど社交的じゃないから、こうやって誘ってくれるのはありがたい。懇親会、楽しみな気持ちもあるけどやっぱりちょっと緊張するし。緊張してるから、あんな夢見ちゃったんだろうし。
だから、しっかりしろ、七海。いつまで中学時代のこと引きずってんだよ、イタすぎるぞ。
くまがおはようって叫んでるスタンプに続けて、いろはに「OK」と返信した。
♢
夜19:00、指定された小料理屋の個室には、同じく入社を迎える数人の顔が集まっていた。
あの人、見たことあるなあとか、グループ面接で一緒だった人かなあなんてまばらな記憶を掘り起こしている隣で、いろはは「久しぶりだね〜!」なんていろんな人に声をかけている。同期のムードメーカーは卜部いろはに決まりだなって、誰もが確信した瞬間だった。
「よ〜し、新採は少なくとも全員揃ってるかな? こんばんは、人事部の日下です。平日ってことで、先輩社員のなかにはまだ残務処理のため未到着の人もちらちらいますが――あっ、入社前に残業のはなししないほうがいい!? っていうか、もう乾杯しちゃっていいよね、いいですよねえ?」
同一人物とは思えなくて申し訳ないのだけれど、入社前の説明会のときにはピシッと仕切っていた覚えのある人が、すごく砕けた口調で音頭をとる。そのおかげで、緊張で強張っていた同期たちの表情もほぐれたみたいだった。
「じゃあ〜、みなさんドリンク持ってね。持った? 改めまして、人事部の日下です。先輩社員のみなさんは業務お疲れさまです、いやまじで。え〜、今日はとことん交流を深めてもらって、春からの地獄に向けて、あ地獄とか言わないほうがいいね、え〜と、こういうときなんて言うの? 春からの新しい門出? に、カンパーーーイ!」