この度、元副総長さまが会社の先輩になりまして。
「中学卒業ぶり? いやそんなことないか、高校のとき何回か会ってたっけ」
「会ってたっていうか、そこにいたって感じですけど、夏祭りとか文化祭とか」
「うわ、思い出してきた。ううわ懐かし、中学の連れとか、まだツルんでんの?」
「あんまり……SNSでたまにコメントしあうくらい」
「へえ、でも俺もそんな感じ、地元もぜんぜん帰ってない」
「……ていうか千景さんが、ふつうに社会人してるのかなり笑えます、SNS載せたい」
「俺のことなんだと思ってんの」
「ヤンキー」
「……南、まじでそれうちの先輩たちに言うなよ」
「冗談です冗談です」
「あともちろん同期にもぜったい言うな。ていうか誰にも言うな。どっから漏れるかわかんないから」
「わかってますって」
積もるはなしもあるんじゃない? と、日下さんの計らいで私と千景さんは隣同士の席にされた。いろはも気を遣ってか、別の卓に移動して他の同期や先輩たちの輪に溶け込んでいる。
周囲が期待しているほど、私と千景さんのあいだには積もるはなしなんて、実はないんだけどな。
「ヤンチャなときはあったけど、千景さんはてっきり、モデルとかアイドルにでもなんのかなあって心のどっかで思ってました」
「はあ?」
「私だけじゃなくて後輩女子はみんな思ってたと思う」
「いやいや、そんなガラかよ……」
「だって、人気凄かったもん、千景さんと、円さん――」
円さん、という名前を久しぶりにはっきりと口にした。千景さんも久しぶりに耳にしたのだと思う。ぴり、と張り詰めた空気が私たちを包みこんで、アルコールで熱った身体を簡単にさましてくれる。
巽円と須臣千景といえば、私の地元で知らないひとはいなかっただろう。可愛く言うとイケメンヤンキーツートップ、あのころっぽく言うと不良グループの総長と副総長だった。
せめてイケメンヤンキーなままでいてほしかったけれど、円さんのほうは完全に悪い道に逸れてしまって、中学を卒業してからは、ヤクザと関わってるとかクスリの売人やってるとか、いろんな噂を耳にした。だから、千景さんがもう何年も地元に帰ってないっていうのも納得だった。