騎士団隊長の初恋は、訳あり男装剣士でした
静まり返った室内。
遠くに、庭のざわめきがある。
笑い声。
グラスの触れ合う音。
風に揺れる葉の気配。
すべてが、少し遠い。
ソファに身を預け、
セレスティアはゆっくりと目を閉じた。
酔いは、もう強くはない。
けれど、
どこか感覚が曖昧で、
現実と夢の境が薄くなっている。
――だからだろうか。
ふとした拍子に、思い出す。
(……)
近かった。
ただ、それだけのこと。
言葉も、
特別な出来事もなかったはずなのに。
距離だけが、やけに鮮明に残っている。
触れていた指先。
かすかに触れた呼吸。
「……」
小さく、息を吐く。
意識して思い出したわけではない。
ただ、思考の隙間に、勝手に浮かんできた。
――不思議だった。
(……あの、手合わせ稽古の時とは違う)
あの時は、ただ近すぎて、息が詰まった。
けれど今は、逃げたいとは思わなかった。
むしろーー
思い出すたびに、胸の奥がわずかに落ち着く。
(距離はあの時と同じはずなのに)
理由は、分からない。
けれど。
(……あのままでも、よかった)
ーー戻れなく気がしたのに。
ふと、そんな感覚がよぎる。
何が、とは考えない。
考えた途端に、壊れてしまいそうで。
指先を、わずかに握る。
あの距離を、拒まなかった自分がいる。
それをどう考えればいいのか、まだ分からない。
けれど。
ただ一つ、確かなのはーー
彼に身を預け、あの距離から離れようと思わなかった、その一瞬を
「間違いだった」とは、思えなかったこと。
静かな天井を見つめたまま、ゆっくりと息を吐く。
胸の奥に残る、わずかな熱。
消えたはずの距離が、まだどこかに残っているような感覚。
それが何なのかは、まだ分からない。
けれどーー
(……少しだけ)
ほんのわずかに。
何かが、変わってしまった気がした。
遠くに、庭のざわめきがある。
笑い声。
グラスの触れ合う音。
風に揺れる葉の気配。
すべてが、少し遠い。
ソファに身を預け、
セレスティアはゆっくりと目を閉じた。
酔いは、もう強くはない。
けれど、
どこか感覚が曖昧で、
現実と夢の境が薄くなっている。
――だからだろうか。
ふとした拍子に、思い出す。
(……)
近かった。
ただ、それだけのこと。
言葉も、
特別な出来事もなかったはずなのに。
距離だけが、やけに鮮明に残っている。
触れていた指先。
かすかに触れた呼吸。
「……」
小さく、息を吐く。
意識して思い出したわけではない。
ただ、思考の隙間に、勝手に浮かんできた。
――不思議だった。
(……あの、手合わせ稽古の時とは違う)
あの時は、ただ近すぎて、息が詰まった。
けれど今は、逃げたいとは思わなかった。
むしろーー
思い出すたびに、胸の奥がわずかに落ち着く。
(距離はあの時と同じはずなのに)
理由は、分からない。
けれど。
(……あのままでも、よかった)
ーー戻れなく気がしたのに。
ふと、そんな感覚がよぎる。
何が、とは考えない。
考えた途端に、壊れてしまいそうで。
指先を、わずかに握る。
あの距離を、拒まなかった自分がいる。
それをどう考えればいいのか、まだ分からない。
けれど。
ただ一つ、確かなのはーー
彼に身を預け、あの距離から離れようと思わなかった、その一瞬を
「間違いだった」とは、思えなかったこと。
静かな天井を見つめたまま、ゆっくりと息を吐く。
胸の奥に残る、わずかな熱。
消えたはずの距離が、まだどこかに残っているような感覚。
それが何なのかは、まだ分からない。
けれどーー
(……少しだけ)
ほんのわずかに。
何かが、変わってしまった気がした。