騎士団隊長の初恋は、訳あり男装剣士でした
回廊を抜け、木立の小道を進んだ先。
西離宮の扉が静かに開く。
石造りの外観とは違い、中はやわらかな光に満ちていた。
大きな窓。淡い生成りのカーテン。
壁は白に近い淡色でまとめられ、重厚さよりも静けさが勝っている。
「……思っていたより、ずっと落ち着く」
フェリスは素直にそう言った。
窓の向こうには庭。
整えられてはいるが、どこか自然の気配を残している。
風が入る。
森ほどではない。
けれど、息が詰まる感じはしない。
「庭に面した一室だ。今は他の客室にも滞在者はいない。静かに過ごせると思う」
ベイルの説明は簡素だ。
フェリスは部屋の中央まで進み、ゆっくりと見回す。
磨かれた床。
木の香りのする調度。
過度に豪奢ではないが、品のある空間。
ーーちゃんと“考えて”選ばれた部屋だ。
胸の奥に、じんわりと温かさが広がる。
「……うれしい」
ぽつりと、素直な声。
王宮の客人を迎える整えられた部屋。
けれど、その静けさはどこか優しい。
森で過ごす自分のことを思って、選ばれたような気がした。
「ここならちゃんと眠れそう」
小さく笑う。
その表情は、王宮で見せた礼儀正しい顔ではない。
森で見た、あのやわらかな笑み。
ベイルは一瞬、息を止める。
不意に見せられたその笑みに、思考がわずかに空白になる。
自分が用意したわけではない。
殿下の配慮だ。
だが、それでも。
(喜んでくれて、よかった)
「気に入ったなら、何よりだ」
いつもの声音でそう告げる。
ほんの少しだけ、柔らかく。
「では、私はこれで……後で侍女が来るはずだ」
ベイルが部屋から離れようとした、その時。
「あ!そうだ……ちょっと待って」
フェリスに呼び止められ、足を止める。
西離宮の扉が静かに開く。
石造りの外観とは違い、中はやわらかな光に満ちていた。
大きな窓。淡い生成りのカーテン。
壁は白に近い淡色でまとめられ、重厚さよりも静けさが勝っている。
「……思っていたより、ずっと落ち着く」
フェリスは素直にそう言った。
窓の向こうには庭。
整えられてはいるが、どこか自然の気配を残している。
風が入る。
森ほどではない。
けれど、息が詰まる感じはしない。
「庭に面した一室だ。今は他の客室にも滞在者はいない。静かに過ごせると思う」
ベイルの説明は簡素だ。
フェリスは部屋の中央まで進み、ゆっくりと見回す。
磨かれた床。
木の香りのする調度。
過度に豪奢ではないが、品のある空間。
ーーちゃんと“考えて”選ばれた部屋だ。
胸の奥に、じんわりと温かさが広がる。
「……うれしい」
ぽつりと、素直な声。
王宮の客人を迎える整えられた部屋。
けれど、その静けさはどこか優しい。
森で過ごす自分のことを思って、選ばれたような気がした。
「ここならちゃんと眠れそう」
小さく笑う。
その表情は、王宮で見せた礼儀正しい顔ではない。
森で見た、あのやわらかな笑み。
ベイルは一瞬、息を止める。
不意に見せられたその笑みに、思考がわずかに空白になる。
自分が用意したわけではない。
殿下の配慮だ。
だが、それでも。
(喜んでくれて、よかった)
「気に入ったなら、何よりだ」
いつもの声音でそう告げる。
ほんの少しだけ、柔らかく。
「では、私はこれで……後で侍女が来るはずだ」
ベイルが部屋から離れようとした、その時。
「あ!そうだ……ちょっと待って」
フェリスに呼び止められ、足を止める。