騎士団隊長の初恋は、訳あり男装剣士でした

第四話「秘密の晩餐」

 晩餐(ばんさん)の間。

 長卓(ちょうたく)には、内々とはいえ王宮らしい整った料理が並ぶ。

 豪奢(ごうしゃ)というよりは、上質で落ち着いた(しつら)え。

 レオニードは椅子の背にゆったりともたれ、手元のグラスを静かに揺らした。

 公式の場ではない。
 だからこそ、余計な駆け引きも、政治的な含みもいらない夜。

 ーーだが、あの二人にとっては、少なからず意味を持つ時間になる。

 「……さて、一体どんな顔をしてエスコートしているのやら……」

 勝手にベイルの事を想像し、くす、と喉の奥で笑う。

 王宮内でも、屈指のドレス選びと化粧の腕前を持つ侍女のリタを、わざわざフェリス付きにしたのだから……。

 剣を握れば誰よりも真っ直ぐなのに、人の心を前にすると、途端(とたん)に臆病になる。

 あれは、不器用というよりーー真面目過ぎるのだ。

 軽く扱えない。
 簡単に踏み込めない。

 だからこそ、動けない。

 「あいつらしいと言えば、らしいがな」

 フェリスの事も思い出す。

 静かな瞳。
 柔らかな笑みは浮かべるも、どこか、一人で立とうとする気配。

 あの二人は……どこか似ている。

 森で、偶然交差した縁。
 剣士として出会った二人。
 互いのあり方には惹かれている。

 だが、その先へ踏み出せずにいる……。
 
 二人を無理に近づける気はないが、互いを“剣士”としてではなく“男女”として知る機会くらいはあってもいい。
 だから少しだけ、舞台を整えた。

 あくまでも整えただけだ。

 あとはーー当人次第。

 「感謝してくれとまでは言わないが……これくらいのお節介くらいは許してもらえるだろう」

 呟いて、肩をすくめる。

 扉の向こうから、かすかな足音。

 レオニードは姿勢を正しながらも、口元の笑みは隠さない。

 王子というより、悪戯(いたずら)を仕掛けた友人のような顔で、その瞬間を待った。

 「さてーー観覧といこうか」
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