騎士団隊長の初恋は、訳あり男装剣士でした
フェリスを抱きかかえたまま、ベイルは静かな回廊を歩く。
燭台の灯りが石畳に揺れ、足音だけが低く響いた。
腕の中の体温は思ったより軽く、そして柔らかい。
「……まったく」
小さく息を吐く。
燭台の灯りが揺れるたび、淡い灰銀色の髪がほのかに光を帯びる。頬は、酒の名残か、うっすらと赤い。
「……慣れていないのなら、控えめにと言っただろう」
小さく呟くが、返事はない。
ただ、指先がわずかに衣を掴む。無意識の動き。
胸の奥が、静かに軋む。
離宮の寝室に辿り着き、そっと扉を開ける。夜気の残る静かな寝室。
寝台は整えられ、灯りは控えめに落とされている。
ベイルは慎重に歩み寄り、そっと体を横たえた。
手を放すーーその一瞬が、やけに長く感じられる。
髪が枕に広がる。長い睫毛が影を落とし、規則正しい寝息がこぼれる。
「……本当に、俺を救った、剣士なのか?」
どうしてこうも隙だらけなのか。
今目の前で、眠る姿は、剣士の姿とは程遠い。
その落差が、胸を揺さぶる。
指が、頬へと伸びる。
指先が、そっと頬に触れる。
やわらかい。
かすかに甘い香りがした。
酒の匂いに混じる、柔らかな花の気配。
不意に、鼓動が一つ跳ねる。
触れたのは指先だけのはずなのに、妙に距離が近い気がしてーー。
温もりが、じんわりと伝わる。離そうとすれば離せる。
だが、ほんの数瞬、そのままでいる。
ーー愛おしい。
言葉にすれば壊れそうな感情が、静かに胸を満たす。
その時。
「……師匠……お土産……」
小さな寝言。
胸の奥が締め付けられる。
「……厄介だな」
ゆっくりと、指を話す。
掛け布を整え、額にかかる髪をそっと払う。
「……おやすみ」
静かな声を残し、立ち上がる。
扉を閉めた瞬間、胸の奥に残るのは、温もりとーー
自覚してしまった感情だった。
回廊に出た瞬間、ようやく息を吐いた。
それでも今は、まだ言わない。
夜は、何も知らぬ顔で更けていく。
燭台の灯りが石畳に揺れ、足音だけが低く響いた。
腕の中の体温は思ったより軽く、そして柔らかい。
「……まったく」
小さく息を吐く。
燭台の灯りが揺れるたび、淡い灰銀色の髪がほのかに光を帯びる。頬は、酒の名残か、うっすらと赤い。
「……慣れていないのなら、控えめにと言っただろう」
小さく呟くが、返事はない。
ただ、指先がわずかに衣を掴む。無意識の動き。
胸の奥が、静かに軋む。
離宮の寝室に辿り着き、そっと扉を開ける。夜気の残る静かな寝室。
寝台は整えられ、灯りは控えめに落とされている。
ベイルは慎重に歩み寄り、そっと体を横たえた。
手を放すーーその一瞬が、やけに長く感じられる。
髪が枕に広がる。長い睫毛が影を落とし、規則正しい寝息がこぼれる。
「……本当に、俺を救った、剣士なのか?」
どうしてこうも隙だらけなのか。
今目の前で、眠る姿は、剣士の姿とは程遠い。
その落差が、胸を揺さぶる。
指が、頬へと伸びる。
指先が、そっと頬に触れる。
やわらかい。
かすかに甘い香りがした。
酒の匂いに混じる、柔らかな花の気配。
不意に、鼓動が一つ跳ねる。
触れたのは指先だけのはずなのに、妙に距離が近い気がしてーー。
温もりが、じんわりと伝わる。離そうとすれば離せる。
だが、ほんの数瞬、そのままでいる。
ーー愛おしい。
言葉にすれば壊れそうな感情が、静かに胸を満たす。
その時。
「……師匠……お土産……」
小さな寝言。
胸の奥が締め付けられる。
「……厄介だな」
ゆっくりと、指を話す。
掛け布を整え、額にかかる髪をそっと払う。
「……おやすみ」
静かな声を残し、立ち上がる。
扉を閉めた瞬間、胸の奥に残るのは、温もりとーー
自覚してしまった感情だった。
回廊に出た瞬間、ようやく息を吐いた。
それでも今は、まだ言わない。
夜は、何も知らぬ顔で更けていく。