騎士団隊長の初恋は、訳あり男装剣士でした
昼の食事を終え、店を出ると、王都の通りには柔らかな陽光が満ちていた。
石畳の道を、荷車がゆっくりと進む。
昼の喧騒はまだ穏やかで、街はどこかゆったりとした空気に包まれていた。
ベイルとフェリスは並んで歩く。
少し距離をあけて。
けれど、先ほどの食事のやり取りが、その沈黙を不思議と重くはしていなかった。
むしろーー
どこか落ち着かない静けさ。
互いに、少しだけ意識している。
ベイルは視線を前に向けたまま歩く。
(……困らない、か)
胸の奥で、先ほどフェリスが言った言葉が、静かに反芻される。
騎士としての理性と、
一人の男としての感情が、
胸の奥で静かにせめぎ合っている。
その隣で。
フェリスは店先を眺めながら歩いていた。
布地の店。
細工の美しい靴が並ぶ店。
色鮮やかな果実を並べた露店。
人々の声が、通りににぎやかに響いている。
それでも彼女の視線は、時折ふとベイルの方へ向く。
それは、昨日までとは少しだけ違うように感じられる。
通りの角で、フェリスの足がふと止まった。
小さな店先。
窓辺に並んでいるのは、金属や石で作られた細やかな装飾品。
細工の美しい髪留めや髪飾りが、陽の光を受けてきらりと輝いている。
「……きれい」
小さく零れた声。
ベイルも足を止め、店先を見る。
そこは王都でも評判の装飾品店だった。
だが彼の視線は、商品ではなくーー
それを見つめるフェリスに向く。
淡紫の瞳が、珍しく少しだけ興味を宿している。
「……気になるのか」
フェリスは少しだけ困ったように笑った。
「うん……少しだけ」
窓に並ぶ髪飾りを見つめながら言う。
「でも、自分には、使う機会なんてないし……」
フェリスは窓辺の髪飾りから目を離した。
「行こっか」
そう言って歩きだそうとする。
「待て」
ベイルが短く呼び止めた。
フェリスが振り向く。
「……?」
「入ろう」
「え?」
フェリスは瞬きをした。
「でも、私ーー」
言いかける。
「使う機会がないなら、作ればいい」
「……?」
フェリスは、意味がわからないといった顔。
ベイルはそれ以上説明せず、店の扉を押した。
小さな鈴が、澄んだ音を鳴らす。
フェリスは戸惑いながらも後を追った。
石畳の道を、荷車がゆっくりと進む。
昼の喧騒はまだ穏やかで、街はどこかゆったりとした空気に包まれていた。
ベイルとフェリスは並んで歩く。
少し距離をあけて。
けれど、先ほどの食事のやり取りが、その沈黙を不思議と重くはしていなかった。
むしろーー
どこか落ち着かない静けさ。
互いに、少しだけ意識している。
ベイルは視線を前に向けたまま歩く。
(……困らない、か)
胸の奥で、先ほどフェリスが言った言葉が、静かに反芻される。
騎士としての理性と、
一人の男としての感情が、
胸の奥で静かにせめぎ合っている。
その隣で。
フェリスは店先を眺めながら歩いていた。
布地の店。
細工の美しい靴が並ぶ店。
色鮮やかな果実を並べた露店。
人々の声が、通りににぎやかに響いている。
それでも彼女の視線は、時折ふとベイルの方へ向く。
それは、昨日までとは少しだけ違うように感じられる。
通りの角で、フェリスの足がふと止まった。
小さな店先。
窓辺に並んでいるのは、金属や石で作られた細やかな装飾品。
細工の美しい髪留めや髪飾りが、陽の光を受けてきらりと輝いている。
「……きれい」
小さく零れた声。
ベイルも足を止め、店先を見る。
そこは王都でも評判の装飾品店だった。
だが彼の視線は、商品ではなくーー
それを見つめるフェリスに向く。
淡紫の瞳が、珍しく少しだけ興味を宿している。
「……気になるのか」
フェリスは少しだけ困ったように笑った。
「うん……少しだけ」
窓に並ぶ髪飾りを見つめながら言う。
「でも、自分には、使う機会なんてないし……」
フェリスは窓辺の髪飾りから目を離した。
「行こっか」
そう言って歩きだそうとする。
「待て」
ベイルが短く呼び止めた。
フェリスが振り向く。
「……?」
「入ろう」
「え?」
フェリスは瞬きをした。
「でも、私ーー」
言いかける。
「使う機会がないなら、作ればいい」
「……?」
フェリスは、意味がわからないといった顔。
ベイルはそれ以上説明せず、店の扉を押した。
小さな鈴が、澄んだ音を鳴らす。
フェリスは戸惑いながらも後を追った。