騎士団隊長の初恋は、訳あり男装剣士でした
部屋に入ると、リタは椅子をすすめ、フェリスも向かいに腰を下ろす。
「それで、王都でベイル様と何があったのですか?」
リタにそう尋ねられ、フェリスは今日の出来事を話した。
昨日のリタに言われた言葉が気になり、ベイルに直接訪ねたこと。
ベイルが「否定はできない」と答えたこと。
「困るなら忘れてくれていい」と言われたこと。
それに対して、「困らない」と答えたこと。
そしてーー
偶然目に留めた店の髪飾りを見ていたら、ベイルが買ってくれたこと。
その髪飾りに似合う装いで、王都を回ろうと提案されたこと。
一通り話を聞き終えると、リタの瞳がぱっと輝いた。
「まあ……」
思わず、というように小さく声が漏れる。
それから少し楽しそうに微笑んだ。
「それはまた……随分と素敵なお話ですわね」
「それで、これがその髪飾りなんだけれど……」
箱を取り出し、開けて見せた。
細い銀の髪留め。台座には小さな石が一つ。
深い青の輝きが灯りを受けて静かに光る。
リタはそれを見て、少し目を細めた。
「……夜空みたいで、綺麗だと思って」
フェリスは、少し嬉しそうに笑う。
しばらく石を眺めていたリタが、ふと意味ありげに言った。
「この石の色、ベイル様の髪の色と同じですわね」
フェリスは瞬きをした。
もう一度、石を見る。
深い青。
それから、ふとベイルの髪を思い出す。
光を受けると、群青を帯びるあの色。
「……あ」
小さな声が漏れた。
言われてみれば、確かによく似ている。
フェリスはしばらく石を見つめたまま黙った。
「……ほんとだ」
ぽつりと呟く。
「選んだ時、全然気づかなかった」
けれどーー
ふと、あの店で髪飾りを見た瞬間を思い出す。
なぜだろう。
たくさん並んでいた中で、迷わずこの石の髪飾りを手に取った。
深い青が、妙に目に残ったから。
リタはくすりと微笑む。
「王都の貴族の間では、自身の髪や瞳の色を模した装飾品を贈ることには、特別な意味がございますのーー」
フェリスが顔を上げる。
「特別……?」
リタは一瞬、フェリスの顔を見つめた。
それから、静かに言う。
「自分の一部を相手に預ける……」
「それは恋人同士の、ささやかな習わしとされております」
フェリスの思考が、そこでぴたりと止まった。
……自分の一部を預ける?
……恋人?
ふと、ベイルの顔が浮かんだ。
その瞬間ーー
フェリスの頬が、みるみる赤くなった。
「……」
その様子を見て、リタは楽しそうに目を細める。
「もっとも」
「今回は偶然、そのような形になられたようですけれど……」
リタは箱の中の髪飾りへ視線を落とす。
「フェリス様はともかく、ベイル様がそれをご存じないとは……」
ほんの少し、間を置く。
「あまり思えませんわね」
それを聞いて、胸の奥がどくりと跳ねた。
「これ、明日……付けていくんだよね……」
その声は、どこか困ったようだった。
リタはくすりと小さく笑った。
「ええ。フェリス様の髪色に、とてもお似合いになると思いますわ」
フェリスは顔を上げる。
「それに」
リタは穏やかな声で続けた。
「ベイル様は、きっとお喜びになります」
フェリスは何も言えなかった。
ただ、もう一度だけ箱の中の石を見る。
深い青が、灯りの下で静かに光っていた……。
「それで、王都でベイル様と何があったのですか?」
リタにそう尋ねられ、フェリスは今日の出来事を話した。
昨日のリタに言われた言葉が気になり、ベイルに直接訪ねたこと。
ベイルが「否定はできない」と答えたこと。
「困るなら忘れてくれていい」と言われたこと。
それに対して、「困らない」と答えたこと。
そしてーー
偶然目に留めた店の髪飾りを見ていたら、ベイルが買ってくれたこと。
その髪飾りに似合う装いで、王都を回ろうと提案されたこと。
一通り話を聞き終えると、リタの瞳がぱっと輝いた。
「まあ……」
思わず、というように小さく声が漏れる。
それから少し楽しそうに微笑んだ。
「それはまた……随分と素敵なお話ですわね」
「それで、これがその髪飾りなんだけれど……」
箱を取り出し、開けて見せた。
細い銀の髪留め。台座には小さな石が一つ。
深い青の輝きが灯りを受けて静かに光る。
リタはそれを見て、少し目を細めた。
「……夜空みたいで、綺麗だと思って」
フェリスは、少し嬉しそうに笑う。
しばらく石を眺めていたリタが、ふと意味ありげに言った。
「この石の色、ベイル様の髪の色と同じですわね」
フェリスは瞬きをした。
もう一度、石を見る。
深い青。
それから、ふとベイルの髪を思い出す。
光を受けると、群青を帯びるあの色。
「……あ」
小さな声が漏れた。
言われてみれば、確かによく似ている。
フェリスはしばらく石を見つめたまま黙った。
「……ほんとだ」
ぽつりと呟く。
「選んだ時、全然気づかなかった」
けれどーー
ふと、あの店で髪飾りを見た瞬間を思い出す。
なぜだろう。
たくさん並んでいた中で、迷わずこの石の髪飾りを手に取った。
深い青が、妙に目に残ったから。
リタはくすりと微笑む。
「王都の貴族の間では、自身の髪や瞳の色を模した装飾品を贈ることには、特別な意味がございますのーー」
フェリスが顔を上げる。
「特別……?」
リタは一瞬、フェリスの顔を見つめた。
それから、静かに言う。
「自分の一部を相手に預ける……」
「それは恋人同士の、ささやかな習わしとされております」
フェリスの思考が、そこでぴたりと止まった。
……自分の一部を預ける?
……恋人?
ふと、ベイルの顔が浮かんだ。
その瞬間ーー
フェリスの頬が、みるみる赤くなった。
「……」
その様子を見て、リタは楽しそうに目を細める。
「もっとも」
「今回は偶然、そのような形になられたようですけれど……」
リタは箱の中の髪飾りへ視線を落とす。
「フェリス様はともかく、ベイル様がそれをご存じないとは……」
ほんの少し、間を置く。
「あまり思えませんわね」
それを聞いて、胸の奥がどくりと跳ねた。
「これ、明日……付けていくんだよね……」
その声は、どこか困ったようだった。
リタはくすりと小さく笑った。
「ええ。フェリス様の髪色に、とてもお似合いになると思いますわ」
フェリスは顔を上げる。
「それに」
リタは穏やかな声で続けた。
「ベイル様は、きっとお喜びになります」
フェリスは何も言えなかった。
ただ、もう一度だけ箱の中の石を見る。
深い青が、灯りの下で静かに光っていた……。