きみは硝子のゼラニウム




なのに今もまた、同じことを繰り返してる。握られた右手に意識を全部持っていかれて、足元なんて全然見えていない。


もし今段差があったら、きっと簡単につまずく。


そしたら尋くんは笑いながら支えてくれるんだろうか。
それとも「危なっかしいなあ」って頭をぽんってされるんだろうか。



ほんと、だめ。こんなの、だめなのに。



改札を抜けて、人の波に押されるみたいにホームへ向かう。

土曜日の駅は思っていたより混んでいて、電車が滑り込んできた瞬間、どっと人が動いた。


目的地までの電車に乗り込むと、案の定、車内は満員。知らない人の肩や腕が触れる。

その瞬間、ぐいっと引き寄せられて、気づけば尋くんが私の前に立っていた。



まるで盾みたいに、私を囲うように両手をついて、覆いかぶさる体勢。さりげなく壁を作ってくれているのが分かる。


でも……この距離は、だめ。

だって、近すぎる。

胸のあたりが触れそうで、息がかかりそうで、どうしたって思い出してしまう。



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