きみは硝子のゼラニウム




電車が大きく揺れて、はっと現実に戻る。

反射的に尋くんのシャツを掴んでしまって、また目が合う。

「危な」って小さく笑うその顔が、あの日と重なる。


胸が痛い。好きって言われた言葉が、今さらになってじわじわ広がっていく。



私はいつも自分のことでいっぱいいっぱいなのに、ほんとに、太陽みたいな人だと思う。



なんで私のことが好きなのか、正直わからない。考えれば考えるほど、答えなんて出ない。

出ないのに、気になってしまう。



でも――わからなくても、いいんじゃないか、とも思ってしまう自分がいる。



だって、もし理由を聞いてしまったら、そこで何かが終わってしまう気がするから。だから今は、曖昧なままのほうがいい。



私に、いいところなんてひとつもない。


そう言い切れてしまうくらい、自信がない。あったとしても、それはきっと小さな、小さな部分で、尋くんにとっては取るに足らないものだと思う。



彼はきっと、私とは違う世界で生きている人。そんな人にとって、私の長所なんて、その辺の道端に生えてる雑草みたいなものだ。踏まれても気づかれないくらい、ありふれていて、取る価値もないような。



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