きみは硝子のゼラニウム
「ハーブの、いい匂いする」
そう言って尋くんがしゃがみ込み、ラベンダーにそっと顔を近づける。
風に揺れた紫の花が、彼の頬にかすかに触れそうになって、私はなぜかそれだけで胸が高鳴る。
「アロマオイルとかにも使われたりするんですよ」
へー、と相槌を打つ尋くんの隣に私もなんとなく、しゃがむ。
視界いっぱいに広がる紫、前も後ろもラベンダーで、世界はやわらかい香りに包まれているのに、すぐ隣には尋くんがいるという事実のほうが、ずっと強く意識に残る。
少し動けば肩が触れそうな距離。触れないようにしているのに、意識すればするほど近く感じてしまう。
「ラベンダーの花言葉わかる?」
「……献身的な愛…あなたを待っています…ですかね?」
そう言って尋くんのほうを向いた瞬間、あまりの近さに息が止まる。
思っていたよりずっと近くに彼の顔があって、まつ毛の長さまで見えてしまう距離。