きみは硝子のゼラニウム




そんなこんなで帰路でも尋くんに振り回されながら、あっという間に家に着いてしまった。

尋くんは門の前で立ち止まり、家を見上げながら「立派な家だなー」と呟く。



この、無駄に広い家に、今からひとりで過ごさなければいけないの?



「じゃあ、おやすみ」



尋くんはそう言って、握っていた手をゆっくり緩めて、背中を向けて歩き出す。



おやすみ…?

もう、行っちゃうの?

またひとりになるの…?



そう思った瞬間、無意識に手が伸びて、尋くんのシャツを軽く引っ張っていた。



「ひな?」



驚いたように振り向く尋くんの顔。

恥ずかしくて、うまく顔をあげられない。


だけど、


行かないでほしいの。帰らないでほしいよ。



ぎゅっとシャツをつかんで、涙目になりながら尋くんを見上げると、尋くんは少し顔を赤くして片手で顔を覆った。



「…まじで、反則。ずるいわ、それは…」



反則…?

なんのことかよくわからないけれど、とにかく帰らないでほしい気持ちだけが胸にあふれる。



「…ひ、尋くん…まだ、一緒にいたい…」



初めて1日一緒にいて、すっかり怖くなってしまった。



< 121 / 301 >

この作品をシェア

pagetop