きみは硝子のゼラニウム
そんなこんなで帰路でも尋くんに振り回されながら、あっという間に家に着いてしまった。
尋くんは門の前で立ち止まり、家を見上げながら「立派な家だなー」と呟く。
この、無駄に広い家に、今からひとりで過ごさなければいけないの?
「じゃあ、おやすみ」
尋くんはそう言って、握っていた手をゆっくり緩めて、背中を向けて歩き出す。
おやすみ…?
もう、行っちゃうの?
またひとりになるの…?
そう思った瞬間、無意識に手が伸びて、尋くんのシャツを軽く引っ張っていた。
「ひな?」
驚いたように振り向く尋くんの顔。
恥ずかしくて、うまく顔をあげられない。
だけど、
行かないでほしいの。帰らないでほしいよ。
ぎゅっとシャツをつかんで、涙目になりながら尋くんを見上げると、尋くんは少し顔を赤くして片手で顔を覆った。
「…まじで、反則。ずるいわ、それは…」
反則…?
なんのことかよくわからないけれど、とにかく帰らないでほしい気持ちだけが胸にあふれる。
「…ひ、尋くん…まだ、一緒にいたい…」
初めて1日一緒にいて、すっかり怖くなってしまった。