きみは硝子のゼラニウム
尋くんをリビングに通すと「ひろっ」と驚いていて、自分でも広いなと思う。物心ついたときからずっとこの家だけれど、この広さには慣れない。
「…じゃ、じゃあ、適当に座ってて!とりあえず、飲み物とってくるね」
私はあたふたしながら言うけれど、尋くんは無言で一点を見つめている。
その視線の先をたどると、壁にかけられた一輪のバラのドライフラワーがあった。
「…あれ、もしかして俺があげたやつ?」
「…う、うん…枯れちゃうのもったいなくて、ドライフラワーにしたの」
できれば、ずっと咲いていてほしいけれど、それは叶わない。それでも、この形で残しておきたかった。
「…あの時、すごく嬉しかったから」
初めてだった、私のことを綺麗だなんて言ってくれたのは。
初めて、自分をちゃんと見てくれた人がいると感じた瞬間だった。
あの時、私は初めて――王子様だって思ったんだよ。
ちらと隣の尋くんの顔を見るけれど、何を考えているのか全く分からない。ただ、ずっとあのドライフラワーだけを見つめている。
お…重かった、かな…。もらったものをドライフラワーにしてまで飾っておくなんて…。
でも、せっかく来てくれたんだから、暗い空気にしちゃいけない。