きみは硝子のゼラニウム




このまま寝顔を見ていたいかも、なんて一瞬思ったそのとき。


ぐっと、さらに引き寄せられる。

腰に回る腕の力が一段と強まって、背中に彼の胸の熱がぴたりとくっつく。



「……っ」



………だめ、これ以上は本当に無理。



「尋くんっ!朝だよっ!」



尋くんは朝が弱いのかもしれない。うっすらと目を開けて、焦点の合わないまま私を見ている。


ぼーっとしたその瞳に映る自分を想像して、胸がきゅっとする。


ゆっくり、腕の力が少しだけ緩んで、その隙を逃さず、そっと身体をずらして抜け出す。

解放された瞬間、どっと力が抜けた。


落ち着け、私……!



「…んー、ねむ」



甘えるみたいにそう呟いて、尋くんはころん、と体勢を変えてうつ伏せになる。そのまま、ぴくりとも動かない。


ま、また寝た…?


思わず呆れ半分、安心半分で時計を見ると、もう9時を過ぎていて、カーテン越しの光もすっかり強くなっている。


私は今日これといった予定はないけれど、尋くんはどうなんだろう。もし大事な用事があったら…。



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