きみは硝子のゼラニウム
もう、ほんとに恥ずかしい。
この胸の動きにも慣れないし、いちいち尋くんの仕草が特別に見えてしまう。視線を合わせないところも、寝ぼけてるところも。
どうしてくれるの。
さっきまではただ心臓がうるさいだけだったのに、今は奥のほうがぎゅうっと締めつけられている。
ああ、これが恋ってやつなのかな、なんて他人事みたいに思う。こんなに感情が忙しいなんて知らなかった。
嬉しくて、恥ずかしくて、苦しくて、でも離れたくない。恋って、大変だ。ほんとに。
いつかこの心臓、握りつぶされて死ぬんじゃないかなって、本気で思うくらい。
「……まじでごめん」
もう一度、小さく呟く尋くん。その声はさっきよりも少しだけ真剣で、私は慌てて首を振ると、バチッ、と目が合った。
「ひな」
寝起きの、まだ少し掠れた甘い声で名前を呼ばれる。それだけで、胸の奥がとろけそうになる。
尋くんの手がゆっくり私に伸びてきて、反射みたいに目をぎゅっと閉じてしまった。
ぽん、とやわらかい衝撃。頭の上に、そっと置かれた大きな手。
恐る恐る目を開けると、そこには優しい顔をした尋くんがいた。少しだけ上がった口角。
なに、尋くん…その顔。