きみは硝子のゼラニウム




すき、と唐突に浮かんだ言葉が、喉までせり上がる。


危ない、今口に出たら終わる。終わるってなにが、って自分でも分からないけど、とにかく今はだめな気がして、ぐっと飲み込む。



昨日、気づいてしまった。尋くんが私に向ける優しい顔には、何かが混ざっていること。視線の止め方とか、触れ方とか、言葉の選び方とか。全部が少しだけ特別で、それに気づいてしまったら、もう戻れない。


そして、もしかしたら。私も同じ顔をしてるのかもしれない、って思う。



好きだと自覚した瞬間から、見え方が変わった。尋くんの一挙一動が意味を持って見えるし、優しさの全部が特別に感じる。


それと同時に、怖くもなる。

もしかして、もうばれてる?

こんなに分かりやすく胸が騒いで、目で追って、触れられただけで固まって。隠せている自信なんて、まるでない。



尋くんは、何も言わずにもう一度ぽん、と私の頭に手を置いた。



「…そろそろ帰るかな」


「……あ、うん」



……そっか。そうだよね。

帰らなきゃ、いけないよね。


…………分かってる。分かってるよ。


ずっと一緒にいられるわけじゃないって。お風呂にも入りたいだろうし……。



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