きみは硝子のゼラニウム
昨日、私がわがままを言って引き留めたんだ。だから朝までこうして一緒にいてくれたんだよね。
そう思うと、これ以上何かを望むなんて、いけないことだって分かってる。
でも、頭では理解しても、胸の奥の寂しさはどうにもならなくて、それが顔に出てしまったんだろう。
尋くんは少し眉を下げながら、優しい声で「またすぐに会いに来るから」と言った。
玄関で、靴を履いている尋くんの背中をじっと見つめる。
1日一緒にいたはずなのに、まだ時間が足りない。まだ、もっと傍にいたいのに。
「昨日、言いそびれたけど――」
立ち上がった尋くんが振り向く。
その瞬間、視線がぴたりと合った。
「ひなのせいなんてことは、ひとつもないよ」
尋くんの声は、柔らかく、でも揺るがない。
玄関の狭い空間に、言葉が静かに染み渡る。