きみは硝子のゼラニウム
やっと解放されたのは、体感では1時間くらい経った気分だったけれど、実際は20分ほどらしい。
人の流れに沿って体育館を出ると、外の光がやけに眩しい。廊下も暑いけれど、さっきよりはまだましだ。
あとは教室でホームルームをして終わり。
教室の扉を開けた瞬間、ふわっとクーラーの冷たい空気が頬に触れた。
自分の席に座って、まだ少し火照った頬を手の甲でぱたぱたとあおぐ。
クーラーの風が首筋を撫でて、やっと呼吸が整ってきた、そのとき。
「一色さん」
不意に名前を呼ばれて、びくっと肩が揺れた。
顔を上げると、視界の端に立っていたのは金森くんだった。
この学校で、唯一、私に話しかけてくれる人。
去年も同じクラスで、クラス会長をしていた彼は、誰に対しても分け隔てなくて、困っている人を見たら自然と手を差し伸べるタイプだ。きっと私みたいな、教室の隅にいる人間を放っておけないんだろう。
「放課後くる?」
「……え?」
くる?
頭の中に疑問符が浮かぶ。少し照れくさそうに、でもどこか期待を含んだ目でこちらを見る金森くん。