きみは硝子のゼラニウム




なんて返せばいいの。誘われていない、聞いていない、なんて正直に言ったら、きっと場が変な空気になる。



「………聞いてたんだけど、忘れてたみたい。バイト入れちゃったから、行けないや」



私がはっきりそう言った途端、教室の空気がふっと緩んだ。さっきまでチラチラとこちらを見ていた人たちも、何事もなかったかのように自分の会話に戻っていく。


……ああ、よかった。


ホッとする気持ちと、やるせない気持ちが半分ずつ。


机の上に置いた手を、ぎゅっと握る。別に、行きたかったわけじゃない。カラオケなんて行ったことないし、大人数も苦手。



最近、尋くんといる時間が長くて、少しだけ忘れていた。


もし、学校での私を尋くんが見たら、なんて言うだろう。



……同じ学校じゃなくて、本当によかった。

心の底から、そう思ってしまった。

こんな私、見せられない。

キラキラしているあの人に。まっすぐで、迷いなく言葉をくれるあの人に。教室の隅で小さくなっている私なんて、到底見せられない。



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