きみは硝子のゼラニウム
「いや、ほんとにかわいいと思うよ?少なくとも、俺はずっとそう思ってたし」
少し照れたように視線をそらしながらそう言う金森くん。
ど、どうしよう…。なんて答えるのが正解なの?
ありがとう?うれしい?
頭の中で選択肢がぐるぐる回るのに、口はひとつも動いてくれない。だらだらと汗が背中を伝っていく。夏前の湿った空気がまとわりついて、呼吸まで浅くなる。
そばでは繁華街のネオンがきらきら瞬いて、大きな音楽が店先から溢れている。笑い声、呼び込みの声、車のクラクション。全部が一度に押し寄せてきて、ただでさえいっぱいいっぱいの胸の内側をさらにかき乱す。
「一色さん、俺もっと仲良くなりたいからさ…できたら、夏休みーー」
…夏休みーー?
喉の奥がきゅっと締まった、そのとき。
「あれ?ひな?」
甘くて、低くて、どこか余裕のある声が、すぐ後ろから落ちてきた。ひな、と名前を呼ばれることに、もうだいぶ慣れてしまった自分がいる。
「ひ、尋くんっ…」
反射的に振り返ると、「ラッキー。店行く前に会えた」なんて軽く笑いながら立っているのは、スクールバッグを肩にかけた制服姿の尋くん。