きみは硝子のゼラニウム
頭の中で言葉を探しながら、「常連さん、で…」と口を開きかけた、その瞬間。
ぐい、と不意に肩を引かれた。
驚く間もなく、尋くんの腕が私の肩に回り、私の体を自分のほうへ引き寄せる。
背中に彼の体温が触れて、一気に思考が真っ白になる。
「ひなは、俺が今口説いてる子だよ」
低く、はっきりとした声が耳元で響く。
「……っ、」
「もうちょっとで俺のになりそうだから、邪魔すんのやめてくれる?」
お、俺の……?
今、確かにそう言った。頭の中でその言葉が何度も反響する。
尋くんの腕に込められた力がさっきより強くなって、体がぴたりと密着する。制服越しに伝わる体温と、かすかに混じるミモザの香りにくらくらする。
顔が熱い。たぶん、みるみる赤くなっているのが自分でもわかる。嬉しくてどうしようもなくて、胸の奥がぎゅうっと締めつけられるみたいに苦しくて、思わずぎゅっと目を閉じた。
ふと、恐る恐る金森くんのほうを見ると、なぜか彼も顔を真っ赤にして固まっている。
わかるよ……。こんな台詞、さらっと言われたら、聞いてるこっちだって心臓もたないよね…!