きみは硝子のゼラニウム
……そんなこと、急に言われても。
いつもは尋くんが手を引っ張ってくれる、あの緩い坂道。
今日はなぜか並んで歩いている。触れそうで触れない距離が、かえって意識してしまう。横目で見ると、尋くんの頬はほんのり赤い。
……なんで言った本人のほうが赤くなってるの、そう言ってやりたいのに、言えない。
ほかの男、なんて。
そんなの、考えたこともない。
私の視界に映るのは、いつだってあなたばっかりなのに。
「…尋くんしか、見てないよ」
気づけば、ぼそっと呟いていた。
自分でも聞き取れるかどうかくらいの小さな声。言った瞬間、心臓が止まりそうになる。
聞こえた?聞こえてない?どっち?
隣をそっと見ると、尋くんは口元を手で隠して、ちら、と横目で私を見てきた。
その目が、少し見開かれている。耳まで赤い。
坂道の下に広がる街の灯りが、きらきら滲んで見えた。
どうしようもなく愛しくて、かっこいいのにかわいくて、ああやっぱり好きだ、と思う。