【完】きみは硝子のゼラニウム
そもそも私は、まだこの気持ちをちゃんと呑み込めていないのに。
好きだと認めたはずなのに、その輪郭はあいまいで、触れようとすると指の間からこぼれていきそうで怖い。
このままの未完成な想いを、そのまま尋くんに渡してしまっていいのかな、って思う。
だってきっと、私の気持ちは、好き、だけじゃない。
こんな複雑な感情を、たった二文字で片づけてしまうのは、ずるい気がするから。
伝えなきゃいけないのは、きっとそれだけじゃない。好き、の奥にある、言葉にならない揺れや弱さや、臆病な本音ごと、ちゃんと届けたい。
でもそれを差し出すには、私はまだ少し子どもで、少し怖がりで、少し自分勝手だ。
ふと、隣を見上げると、尋くんと目が合った。
心臓が、跳ねる。もう何度も見てきたはずの、あのキラキラした瞳。なのに、どうしても慣れない。
まっすぐで、あたたかくて、少しだけいたずらっぽい光を宿したその目に見つめられると、息の仕方さえ分からなくなる。
その瞳の中に、小さく映る自分の姿が恥ずかしくて、情けなくて、目を逸らしたくなるのに、逸らしたら負けな気がして、結局どちらもできないまま固まってしまう。