【完】きみは硝子のゼラニウム
やっぱりこのままじゃ、気持ちを伝えることなんてできない。そう思った、そのときだった。
「明日から夏休みだよな?」
と、尋くんがおもむろに口を開く。低くてやわらかい声が、すぐ隣で響く。
「…そう。尋くんも、ですか?」
「うん。俺も」
……ちなみに今日は学校が終わった後何してたんですか、なんて。
喉元まで出かかった言葉を、ぎゅっと飲み込む。
聞きたい。すごく聞きたい。でも、それを聞く勇気は、やっぱりどこにも見当たらない。
期待してるって思われたらどうしよう、とか、詮索してるって思われたら嫌だ、とか、ぐるぐる考えているうちに、沈黙が落ちる。
「そういや、学校終わりに本屋行ってきた」
不意に投げられた言葉に、思わず顔を上げる。
「……本屋?」
聞き返すと、尋くんは少し得意げに笑って、スクールバッグの中をガサガサと漁り始めた。
やがて取り出されたのは、一冊の本。光を受けてきらりと反射するカバー。表紙には、たくさんのお花が描かれていた。