【完】きみは硝子のゼラニウム
ふう、と小さく息を吐いて、覚悟を決めるみたいに両手をおろす。
視界に飛び込んできたのは、やっぱり優しい顔で微笑んでいる尋くんで、胸がまたきゅっと締めつけられる。
そんな顔しないで。そんなふうに大事そうに見ないで。これ以上は、本当に無理だから。
「夏休み、ひなは何か予定ある?」
不意に投げかけられた問いに、一瞬言葉を失う。
「…ない、です」
小さく答えながら、自分の声が少しだけかすれていることに気づく。
尋くんから見た私は、どう映っているんだろう。
友達がたくさんいて、毎日楽しそうにしてる子に見えているのかな。
だとしたら、少し申し訳ない。
胸の奥がひきつって、うまく笑えない。
私はたぶん、今でも心のどこかで自分に言い聞かせている。ひとりでも大丈夫、って。
「じゃあ連絡するから、夏休み俺にちょーだい」
「え?」
「ふたりで楽しいこといっぱいしよーよ」
ふたりで…?
楽しいこと、いっぱい…?
尋くんは。尋くんは、それでいいの?