【完】きみは硝子のゼラニウム




ふう、と小さく息を吐いて、覚悟を決めるみたいに両手をおろす。

視界に飛び込んできたのは、やっぱり優しい顔で微笑んでいる尋くんで、胸がまたきゅっと締めつけられる。


そんな顔しないで。そんなふうに大事そうに見ないで。これ以上は、本当に無理だから。



「夏休み、ひなは何か予定ある?」



不意に投げかけられた問いに、一瞬言葉を失う。



「…ない、です」



小さく答えながら、自分の声が少しだけかすれていることに気づく。


尋くんから見た私は、どう映っているんだろう。

友達がたくさんいて、毎日楽しそうにしてる子に見えているのかな。

だとしたら、少し申し訳ない。


胸の奥がひきつって、うまく笑えない。


私はたぶん、今でも心のどこかで自分に言い聞かせている。ひとりでも大丈夫、って。



「じゃあ連絡するから、夏休み俺にちょーだい」


「え?」


「ふたりで楽しいこといっぱいしよーよ」



ふたりで…?

楽しいこと、いっぱい…?

尋くんは。尋くんは、それでいいの?



< 174 / 327 >

この作品をシェア

pagetop