きみは硝子のゼラニウム




歩いて数分、まだ昼前で開店前だけれど、窓から従業員の姿がちらほら見える。


扉を押すと、カランカランと小さな音が響き、レジに立っていた男の人がこちらに気づいた。



「Petal & Co.ですけど、予約された花束の配達に来ました」



そう言うと、彼は、ああ!と声を上げて、ぱあっと明るい顔になる。



「すごく、かわいい花束ですね」



男の人は、にこっと笑いながら言った。



「お客様から友人のお誕生日のサプライズにと注文が入って。喜ばれると思います」



僕がもらうわけじゃないんですけどね、と恥ずかしそうに付け加えるその様子に、思わず微笑んでしまう。

すごくわかる。その気持ち。



「わかります、その気持ち。お花って、見てるだけで癒されますよね」



つい、自然に口に出してしまった。胸の奥がぽかぽかして、気持ちまであたたかくなる。すると、彼も笑いながら、ですね、と返してくれる。



「今度は個人的に頼もうかな」



そう言う彼に、私は、ぜひ待ってます、とだけ答え、軽く会釈して店を出た。


< 19 / 301 >

この作品をシェア

pagetop