きみは硝子のゼラニウム




この瞬間が、好き。

花束を届けて、いやな顔になる人なんて今まで出会ったことがない。

誰でも笑顔になれる、魔法みたいな力を持っているお花。

見るだけで心がほぐれて、ちょっとだけ幸せになれる。


渡しただけなのに、胸の中は達成感でいっぱいで、足取りが自然と軽くなる。


外なので、つい綻びそうになった笑顔をぎゅっと唇で押さえながら歩く。



ふとスマホで時間を確認しようとしたその瞬間、後ろから大声が聞こえた。



「危ない!」



その瞬間、後ろへ強く腕を引かれる。


びっくりして固まったすぐあと、ポスッと後頭部が何かに当たった感触と同時に、チャリンチャリンという音とともに自転車が猛スピードで私の横を通り抜けていった。



「…っ、」



……びっくりした…。心臓が一瞬飛び出るかと……。



「はー…心臓止まるわ」



頭上から、どこかで聞いたことのある声。



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