きみは硝子のゼラニウム




外に出ると、ふとお母さんのことを思い出す。

お母さんとお父さんは、結婚式を挙げたのだろうか。

アルバムは今、使われていない物置の奥にしまってある。

泣きながらお母さんの顔を見ていた日、どうしていなくなったの、と写真に語りかけた日を思い出す。

私のせいだなんて思っていたけれど。帰ったら、アルバムを見てみよう。お父さんに聞いてみよう。

きっと今なら、苦しかった記憶も優しい気持ちで見られる気がする。



『ひなのせいなんてことは、ひとつもないよ』



いつか尋くんに言われた言葉が、頭の中で反響する。



『ひなのお母さんだって、ひなが大切だからそうしたんだよ』



急に、お母さんに会いたくなって、どうしようもなく泣きたくなり、走り出したくなる。

凍てつくような寒さの中、私はショッピングモールを出て思わず足を早めた。



お母さん……お母さん。

私、お母さんの思うような子になれてる?



心の中で問いかけてみるけれど、当然ながら返事はない。


低い冬の太陽はどこか頼りなくて、淡い光が街を照らしているだけなのに、凍りつくような空気と、足元からじんわりと伝わってくるアスファルトの冷たさが、耳や肌を刺すみたいに刺激してくる。


涙が勝手に溢れて、ほおを伝い落ちていくのを感じながら、私はただ前に進むしかなかった。



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