きみは硝子のゼラニウム




「中学のときの同級生」



“中学のときの同級生”と言ったその女の子は、さっきまで繋いでいた彼氏らしき人の手をぱっと離して、まっすぐ私のほうへ駆け寄ってきた。



「ひな!久しぶり」



勢いよくそう言いながら、ぎゅっと両手を握られる。

突然のことに驚いて、持っていた店のカバンを思わず手から落としてしまった。



「……ひ、久しぶり」



なんとか言葉を返したけれど、たぶん私は今、ひどくひきつった顔をしていると思う。笑えている気なんて、まったくしなかった。



「ひなちゃんって言うの?」



隣にいた彼氏らしい人が、興味深そうに聞いてくる。



「みんなひなって呼んでるんだよね。あれ?なんでだっけ?ほんとはひなじゃないよね?」



その言葉を聞いた瞬間、心臓が嫌な音を立てた。


あぁ、やめてほしい。

これ以上、思い出させないでほしい。


私、自分の名前が――。



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