きみは硝子のゼラニウム
「…っ、はぁっ…はぁっ…」
苦しい。
胸がぎゅうっと締めつけられて、息がうまくできない。空気を吸っても吸っても足りなくて、喉の奥がひりつく。
心臓だけが、ドクンドクンってうるさいくらい鳴っている。
……嫌い。
大嫌いだよ。自分の名前なんか。
――雛菊。
昔は、好きだったはずなのに。お母さんに由来を聞いたとき、すごく素敵だと思ったんだ。
小さくて可愛い花なんだよって、お母さんは笑って教えてくれた。
愛らしくて、清らかで、素直な子に育ってほしい。そんな願いを込めてつけた名前なんだよって。
私はそれを聞いたとき、すごく嬉しくて、胸がぽかぽかして、この名前みたいな子になりたいって本気で思った。
だから、由来だけじゃなくて、雛菊の花言葉まで調べた。
ピンクは希望。白は無邪気。紫は元気。赤は幸福。黄色はありのまま。
どれもきらきらしていて、綺麗で、全部が優しい意味だった。
名前を呼ばれるたびに、私はお母さんに愛されてるんだって思えた。雛菊って呼ばれるたび、ちゃんと大事にされてるんだって感じられた。
……でも。
周りは、そうじゃなかった。